それはきっと、君に恋をする奇跡。


遥輝との約束を守り、俺は学校でも明るく居続けた。

遥輝が笑ってんのに、俺が泣くわけにいかないだろ……?




「おえっ……!」



昼休み。

一つ上の階のトイレに駆け込むと吐いてしまった。


正直、俺は限界に来ていた。

心と違う態度を取り続けることに。


冷たい水でバシャバシャと顔を洗い、濡れたままの自分の顔を鏡に映す。



『陽菜の過去の思い出に、そんな俺がいれば俺は幸せだから……』



このまま、嘘をつき続けることは正しいのか?

遥輝を裏切り者として忘れ去っていく陽菜を、このままにしていいのか?

このままふたりを会わせないことは本当に正解なのか?


俺が陽菜なら、絶対に会いたいと思うはず。


どんな姿でも、生きているうちに会えるのと会えないのでは全然ちがう。

その後の一生を左右するくらいの後悔になるだろう。



「どうしたらいいんだよっ……俺はっ……」



そのままフラフラと、屋上まで行く。



「遥輝……」



その先に見える遥輝の居場所に向かって名前を呼ぶ。


今遥輝は、逆の景色を見ているのか……?

陽菜を想いながら……。

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