それはきっと、君に恋をする奇跡。
*第5章*
キミの想いを
あの日屋上で、あたしが聞いたのは。
ハルくんは3年前に骨肉腫という病気を発症し、転移再発を繰り返し、余命は数週間だということ。
病気だということをあたしに隠し続けるために、蒼が手紙を代筆していたこと。
蒼はハルくんのために桜園高校に入学し、はじめからあたしを知っていたこと……。
すべてを理解しようとするには、あまりにも難しく、残酷すぎる話だった。
あたしはすぐに、ハルくんからもらった手紙を消印順に並べ文字を比較した。
確かに。
蒼が言っていた通り、中2の冬の手紙から少しだけ文字の形が変わっていた。
それは、ひとつ前の手紙とを見比べて初めてわかること。
あたしの目はすっかり騙されていた。
ハルくんからの手紙を、別人が書いてるなんて誰が思う?
そこまでして、ハルくんがあたしと文通を続けてくれた理由……。
あたしに病気だと知らせず、自分が悪者になっても元気でいると思わせたかった理由……。
…………もう。
勘違いなんて言わせないよ。
桜園高校に行こうと約束してくれたあのときから、ハルくんはあたしを好きでいてくれたんでしょ……?
あたしと同じ気持ちでいてくれたんでしょ……
なのにあたしは。
……ハルくんを忘れて、蒼を好きになってしまった。