それはきっと、君に恋をする奇跡。


蒼は以前にも増して、スマホを肌身離さず持っていた。


今ではその理由が分かる。


授業中、蒼がスマホを取り出すたびにビクッとする。


……ハルくんの家族から、なにか連絡が入ったんじゃないかって不安になるの……。





凍てつく寒さが肌を突き刺す12月に入った。


窓を閉め切っていると、外が寒いなんてことを忘れてしまうくらい温かな光が窓辺を温める。


そんな穏やかな午後の授業中。

何の前触れもなく、それは起こった。



ガタッ!

蒼が突然立ち上がって。



「陽菜、行くぞっ!」



あたしの腕を引っ張ったのだ。



えっ……。


戸惑うあたしを、そのまま教室の外へと連れて行く。



「おい水瀬!授業中だぞ!何やってる!」



先生の怒鳴り声を無視して。



ドクンッ、ドクンッ……!



まさか。

ハルくんに何かあったの……?


連れて行くのはハルくんのところ……?



聞きたいのにそれを声にすることすら怖い。

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