それはきっと、君に恋をする奇跡。


イヤだ。

イヤだ。


そう思うのに足は止まってくれない。


ハルくんには会えない。


そう思うのに、速度はどんどんあがるばかりだった。




駅までそのまま走り続けてタクシーに乗ると、蒼は行先に大学病院を告げた。



「……」



間違いない。

蒼は、あたしをハルくんの元へ連れて行こうとしている。


ここまで強引に連れて行くのは……。



きっと……。




「蒼くんっ!」



病院に入ると女の人が駆け寄ってきた。



「遥輝はっ……!!!」



あの人……。

夏に蒼と一緒にいた菜々さん。


あ……。


もしかして菜々さんは……ハルくんのお姉さん……?


会ったことはないけど、お姉さんがいるのは知っていた。



「陽菜連れてきた!」


「えっ……」



菜々さんは驚いたようにあたしを見たあと。



「陽菜ちゃん……よく来てくれたね」



そう言ってあたしの手をとり、ある病室に入った。

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