それはきっと、君に恋をする奇跡。



***



「んーー……、今日もいい天気になりそう」



ここ数日、あたしは学校へ来るとまず屋上に足を運んでいた。



今日はまた一段と澄んだ空気がとても綺麗で、両手を広げて深呼吸した。


目の前には、大学病院が見える。


……こんなにも、あたしはハルくんの近くにいたんだね。


でももう、そこにハルくんはいない。


代わりに空を見上げる。



「おはよう、ハルくん」



きっとハルくんは、空のどこかで見てくれているはずだから。




───ギィィ。


背後で鉄の扉が開く音がした。


朝から屋上に来る人なんていないのに、誰……?


そう思いながら音に引き寄せられるように首を振ると。



「……蒼?」


「……おっす!」



数日前に見た姿とは違い、髪の毛もしっかりセットされていて、制服は少し着崩してはいるけれど、シャンと背筋を伸ばして。

耳には、今は形見となったハルくんからもらったピアス。




……蒼だ。

蒼が、戻ってきた。
< 375 / 392 >

この作品をシェア

pagetop