それはきっと、君に恋をする奇跡。
……蒼。
じんわりと心が温かくなっていく。
こんなにも、自然に穏やかにハルくんの名前を口にする蒼に。
あたしの心も癒されていく。
「甘いね……」
一口スプーンで掬って口へ運ぶと、濃厚でしっかりした甘さが口の中に広がった。
ハルくん、甘いの好きだったよね。
あたしがクレープの話をすると、俺も食べたいってよく言ってたっけ……。
「もっともっと教えて……」
ハルくんが好きだった、こと、もの。
なにを見て、笑い、感動したのか。
蒼は、あたしが知らないハルくんを。
「……ああ。陽菜もな」
「うん。ハルくんの小学生の時の秘密、暴露しちゃおっかな」
あたしは、蒼が出会う前のハルくんを。
「なになに?すっげー興味あるー」
「聞いたら驚くかもよ?」
お互いの記憶を繋ぎ合わせて、もっともっと形にしていこう。
いつまでもハルくんが、あたし達の心の中で生き続けていくように。
ハルくんの想いが色褪せないように。
ハルくんが、確かに生きた証を───