それはきっと、君に恋をする奇跡。


もう何度か来ているから、迷わずその場所にたどり着ける。


ハルくんのお墓が見えてきたとき、そこに人影を見つけた。


墓石に水を掛けているのは蒼だった。



やっぱり蒼は、ここに居た。


ここに来れば、蒼に会えると思ったんだ。



踏みしめる砂利の音で、蒼があたしに気づく。



「あ、陽菜!」



先に声をかけてくれたのは蒼だった。



……蒼も、ハルくんからのメッセージを受け取っている。


どんなメッセージをもらったのか、ドキドキする心を隠して。



「ふたりの時間、邪魔してごめんね……」



近づいて行く。




ハルくんからのメッセージを見て、気付かされたんだ。



"前に進むことをおそれないで"



完全に前へ進んだつもりでいた。



でもね。

ひとつだけ。


まだ、進めていないことがあった。



胸に芽生えていたこの気持ち。


蒼との関係を変えるのが怖くて。


見えないように蓋をしてた。
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