それはきっと、君に恋をする奇跡。


こんな風にハルくんも今、どこかのグラウンドで白球を追いかけてるの?


考えただけで胸が張り裂けそうになる。


苦しい……苦しいよ……。


あたしとハルくんを引き離した野球……。


もう……野球なんて……見たくない……聞きたくない。


あたしの目の前から消してよっ……。



すると。



「……」



あたしの行く手を阻むように、目の前に影が現れて。


壁のように立ちはだかったのは水瀬くんだった。



……な、に……?


耳を塞いだまま、ジッ……と水瀬くんの目を見つめていると。


そっとあたしの手を耳から離し。



「耳塞ぎたくなるほど、鼻歌ウザかった?」



ちょっと悲しそうな顔をした。



「……あ……」



そうじゃない。


耳を塞いだのは鼻歌のせいじゃなくて、野球部の音を耳に入れたくなかったから。


でも否定しなかったのは……そう思ったのも事実だったし。
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