それはきっと、君に恋をする奇跡。
「……っ、あれは忘れてよ……」
……あの日の出来事は、全てなかったことにしたい。
ハルくんに会えると浮かれてた自分なんて、消し去りたいんだから。
「お願いだからもう放っておいて」
今度こそ、交わそうとすると、
「って言われると、構いたくなるのが俺なんだよね」
腕を掴まれた。
「……っ」
ざわざわ……っと周囲が騒がしくなる。
咄嗟に顔をあげると、登校中の女の子たちがヒソヒソ話しながらこっちを見ていた。
嫉妬を含んだような瞳で。
……朝からほんとにもうやめて。
目立っちゃってしょうがないじゃん。
明るくて人気者の水瀬くんが、どうしてあたしなんかに構うの?
そのまま腕をほどいて、ひとりで昇降口に入る。
彼の存在を消すように上履きに履き替えて廊下を歩いても、水瀬くんは同じペースでついて来た。