それはきっと、君に恋をする奇跡。


それから数枚取ったけど、あたしはどれもいまいちだった。


だって。

うまく笑えないから……。



「次、ラストなんだからいい顔して笑えよー。陽菜、しばらく笑ってねえから頬の筋肉固まってんじゃねえの?」



突然水瀬くんがあたしの頬に手を伸ばしてきた。



「えっ!」



戸惑うあたしをよそに、グルグルと頬をほぐしていく。



「……っ」



水瀬くんから伝わる甘い香り。


心をくすぐられるようなその匂いに一瞬クラッとした。



「や、やめてよっ……」



男の子に触れられるなんて……


意味もなくドキドキしちゃう。



「よーし、これで柔らかくなっただろう」



……なるわけないよ。



そう思ったけど、ちょっと頬をあげてみるとさっきよりもスムーズ動くようになった気がした。
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