それはきっと、君に恋をする奇跡。


頬をゆっくりあげてみる。


画面の向こうには、笑顔のあたし。



……また笑顔にしてもらっちゃった。




「今日一番の顔しろよー」



――パシャ!


今度はいい写真が撮れたかな……そう思ったのに。



「あれ?」



画面にはあたしひとりしか映ってなかった。


隣に映っているはずの水瀬くんがいないのだ。


見ると、足元にしゃがんでいた。



「やべー、小銭落としちまった」


「えっ!?ちょっとなにやってるの?」



最後だって自分で言っておきながら。



「わりーわりー、へへっ」



這いつくばるようにして、散らばった小銭を必死でかき集める水瀬くん。



……マヌケなんだから……。


そんな水瀬くんに、今度は自然と零れる笑み。



せっかくいい笑顔で撮れたのに、ボツだな。


画面の中の自分を見つめ、ちょっと残念だと思った。
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