【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
一抹の不安
「キュリオ様っ!!」
精霊の国の門が閉ざされると同時に彼のもとへ走ってきたのは大魔導師ガーラントだった。精霊王が姿を見せる確率が極めて低いと予想していた彼は、キュリオが次に冥王を頼る可能性も視野に入れていたようだ。
しかし、#主__あるじ__#の心穏やかな笑みを目にし、自分の予想は大きくはずれたのだと悟った。さらにキュリオの腕の中で笑い声をあげるアオイの姿を目にし、緊張の解けたガーラントの瞳からは感涙の涙がとまらない。
「精霊王に会えたのですな!! ……よかった、よかった! 姫様っ……」
「あぁ、心配かけた。ガーラント」
アオイを抱いたまま大魔導師の肩に手を置くキュリオ。彼の背後では事情を知る家臣たちがそわそわとこちらを伺っていたが、頷き笑みを向けると、その瞳には薄らと涙が浮かんだ。
「悠久へ帰ろう」
真っ暗な異空間の中を明るく照らすような、そんなキュリオの声が響く。
絶望に満ちていた彼の心は本来の光を取戻し、その灯となったのがこの幼い赤子であることは間違いない。
もし彼が精霊王に会うこと叶わず、冥王を頼ることとなっていたら彼女の小さな体は耐えられなかったかもしれない。心の臓が止まってから長い時間が経過してしまえば、例え命を繋いだとしても重い後遺症に悩まされたり、最悪……意識が戻らない可能性だってあったのだ。
――そしてガーラントには手放しで喜べない理由が他にもあった。
(瀕死の状態からでも復活が可能なキュリオ様の万能な治癒の力が効かないなど……一体この子の身に何が起きておったのか……)
今回のアオイの場合、まだ心の臓も動いており息もあった状態からの悪化だった。そして何より気になるのが<夢幻の王>の力による復活――。
今までにそのような事例がないため、ガーラントの頭脳をもってしても解決の糸口は見つかりそうにない。もしその謎の手がかりがあるとすれば……
直接アオイに問うか、精霊王に何があったか聞くしかない。
しかし、現時点で赤子であるアオイはまだ話すことができず、謁見さえ不可能な精霊王が答えるわけがない。
(もしまた同じようなことが起こったら……)
ガーラントは城で取り乱したキュリオの姿を思い出し、激しく心が痛んだ。数歩前を歩く彼はとても幸せそうで、とてもじゃないがそのような話は当分出来そうになく……何も起きぬよう、為す術もない大魔導師はただ祈るしかなかった――。
精霊の国の門が閉ざされると同時に彼のもとへ走ってきたのは大魔導師ガーラントだった。精霊王が姿を見せる確率が極めて低いと予想していた彼は、キュリオが次に冥王を頼る可能性も視野に入れていたようだ。
しかし、#主__あるじ__#の心穏やかな笑みを目にし、自分の予想は大きくはずれたのだと悟った。さらにキュリオの腕の中で笑い声をあげるアオイの姿を目にし、緊張の解けたガーラントの瞳からは感涙の涙がとまらない。
「精霊王に会えたのですな!! ……よかった、よかった! 姫様っ……」
「あぁ、心配かけた。ガーラント」
アオイを抱いたまま大魔導師の肩に手を置くキュリオ。彼の背後では事情を知る家臣たちがそわそわとこちらを伺っていたが、頷き笑みを向けると、その瞳には薄らと涙が浮かんだ。
「悠久へ帰ろう」
真っ暗な異空間の中を明るく照らすような、そんなキュリオの声が響く。
絶望に満ちていた彼の心は本来の光を取戻し、その灯となったのがこの幼い赤子であることは間違いない。
もし彼が精霊王に会うこと叶わず、冥王を頼ることとなっていたら彼女の小さな体は耐えられなかったかもしれない。心の臓が止まってから長い時間が経過してしまえば、例え命を繋いだとしても重い後遺症に悩まされたり、最悪……意識が戻らない可能性だってあったのだ。
――そしてガーラントには手放しで喜べない理由が他にもあった。
(瀕死の状態からでも復活が可能なキュリオ様の万能な治癒の力が効かないなど……一体この子の身に何が起きておったのか……)
今回のアオイの場合、まだ心の臓も動いており息もあった状態からの悪化だった。そして何より気になるのが<夢幻の王>の力による復活――。
今までにそのような事例がないため、ガーラントの頭脳をもってしても解決の糸口は見つかりそうにない。もしその謎の手がかりがあるとすれば……
直接アオイに問うか、精霊王に何があったか聞くしかない。
しかし、現時点で赤子であるアオイはまだ話すことができず、謁見さえ不可能な精霊王が答えるわけがない。
(もしまた同じようなことが起こったら……)
ガーラントは城で取り乱したキュリオの姿を思い出し、激しく心が痛んだ。数歩前を歩く彼はとても幸せそうで、とてもじゃないがそのような話は当分出来そうになく……何も起きぬよう、為す術もない大魔導師はただ祈るしかなかった――。