【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
料理長・ジル
食事を任された料理人たちは大小さまざまな銀の器を並べ、芸術とも見まごうほどに美しい料理を次々に作り上げていた。それはそれは見事な手さばきで、彼らに剣を持たせたら一流の剣士だと噂されるくらいなのだ。
「よしっ! あとは果実を盛りつけて終わりだな!」
「はいっ!」
廊下を歩くキュリオのもとへ、年期のはいった……しかし張りのある威勢のよい男の声が響いた。
(この声は……相変わらずだな)
口元に笑みを浮かべ、その声に導かれるようにキュリオは迷いなく歩みをすすめる。
開けた扉を覗くと、見習いであろう若い男たちが長身の老人に怒鳴られながら懸命に果実を盛りつけている。若者らの眼差しはとても真剣だが、横から口を挟む老人はどこか楽し気だった。
「い、如何でしょう……ジル様」
震えるような声で呟いた見習いの男が一歩下がり、隣の老人が前にでた。
「ふむ。悪くはない」
腕組みをして盛りつけられた果物を眺める老人の言葉に、若い男は日に照らされたような明るい笑顔をみせた。
「ほ、本当ですかっ!?」
男が喜びの声を上げると――
「しかぁぁしっっ!!!
まだまだ儂には及ばぁああんっ!!!」
ガハハッと豪快に笑う老人を見た他の料理人たちも、つられて笑いだす。まわりを包むこのあたたかい雰囲気は彼の人柄によるものだとキュリオは知っている。
「ジル、いつもすまないね。あとで君のもとへ酒を届けよう」
品のある落ち着いた声が突如厨房の入口から発せられ、そこにいた全員の視線が一点に集中する。
「よしっ! あとは果実を盛りつけて終わりだな!」
「はいっ!」
廊下を歩くキュリオのもとへ、年期のはいった……しかし張りのある威勢のよい男の声が響いた。
(この声は……相変わらずだな)
口元に笑みを浮かべ、その声に導かれるようにキュリオは迷いなく歩みをすすめる。
開けた扉を覗くと、見習いであろう若い男たちが長身の老人に怒鳴られながら懸命に果実を盛りつけている。若者らの眼差しはとても真剣だが、横から口を挟む老人はどこか楽し気だった。
「い、如何でしょう……ジル様」
震えるような声で呟いた見習いの男が一歩下がり、隣の老人が前にでた。
「ふむ。悪くはない」
腕組みをして盛りつけられた果物を眺める老人の言葉に、若い男は日に照らされたような明るい笑顔をみせた。
「ほ、本当ですかっ!?」
男が喜びの声を上げると――
「しかぁぁしっっ!!!
まだまだ儂には及ばぁああんっ!!!」
ガハハッと豪快に笑う老人を見た他の料理人たちも、つられて笑いだす。まわりを包むこのあたたかい雰囲気は彼の人柄によるものだとキュリオは知っている。
「ジル、いつもすまないね。あとで君のもとへ酒を届けよう」
品のある落ち着いた声が突如厨房の入口から発せられ、そこにいた全員の視線が一点に集中する。