【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
「これは……自覚がないのか、鈍感なのかわからんな。
キュリオ殿、その彼女の笑顔が好きかどうか考えればいいのさ」
顔を上げたキュリオは”なるほど”と、口を開いて目元を和らげる。
「とても愛しいと思っている。それどころか彼女を独占したいと願ってしまう心を止められないほどだ」
抱いたことのない己の感情に悩んでいるのかと思っていたが、あまりにもはっきりしたキュリオの想いにエデンは目を丸くしている。
「ははっ! もう答えは出ているようなものだろう? ……それとも他に障害でもあるのか?」
キュリオから打ち明けてくれた大事な話だが、彼がそのことを口にしたということは更に聞いてほしいことがあるに違いないとエデンは考えを巡らせている。
「……この気持ちが彼女を苦しめているのではないかと思ってね……」
「そういうことか……」
視線を下げて気落ちしたようなキュリオにエデンは笑みを消し、真剣に彼の言葉へ耳を傾ける。
「私自身、初めての感情だ。正直どうすればよいか気持ちを持て余している部分がある」
「……話を聞くに相手は若い娘か? それも恋愛経験があまりないような」
「よくわかったね。その通りだ」
(短い会話からそんなヒントがあっただろうか? )と会話の内容を振り返るキュリオだが、どう見ても互いに戸惑っているような……そんなイメージがひしひしと伝わってくるエデンは微笑ましくキュリオを見つめる。
「キュリオ殿の愛に応えない者がいるとは思えんが、大事にしたい女性なら……」
「……なら?」
「相手の気持ちが追い付くまで待ってやるのが一番だろうな。愛を育むのはそれからの話だ。急ぎ過ぎると美しく咲く花もしおれてしまうぞ」
「……そうか……」
(……まだ赤子のアオイに私は一体何を……)
キュリオは納得したように目を閉じてクスリと笑った。エデンに話したことで負の感情の迷路から解き放たれ、心が軽くなった気がする。
「ありがとうエデン。君のおかげで何となくわかった気がするよ」
「ははっ俺がキュリオ殿に教えてやれることがあるとは正直思わなかったな。その想いが通じたら、いつか紹介してくれよ? キュリオ殿が選んだ女性なら本当に素晴らしい人だろうからな」
「あぁ、その時は必ず。君の恋人にも是非会わせて欲しい」
「もちろんだ。言っとくが俺の女は世界一だぜ?」
キュリオは笑いながらも”私のアオイの方が……”と心の中で秘かに反論したのだった。
――ふたりはまだ知らない。
運命の、分かれ道のひとつがすでに過ぎ去っていたことに――。
キュリオ殿、その彼女の笑顔が好きかどうか考えればいいのさ」
顔を上げたキュリオは”なるほど”と、口を開いて目元を和らげる。
「とても愛しいと思っている。それどころか彼女を独占したいと願ってしまう心を止められないほどだ」
抱いたことのない己の感情に悩んでいるのかと思っていたが、あまりにもはっきりしたキュリオの想いにエデンは目を丸くしている。
「ははっ! もう答えは出ているようなものだろう? ……それとも他に障害でもあるのか?」
キュリオから打ち明けてくれた大事な話だが、彼がそのことを口にしたということは更に聞いてほしいことがあるに違いないとエデンは考えを巡らせている。
「……この気持ちが彼女を苦しめているのではないかと思ってね……」
「そういうことか……」
視線を下げて気落ちしたようなキュリオにエデンは笑みを消し、真剣に彼の言葉へ耳を傾ける。
「私自身、初めての感情だ。正直どうすればよいか気持ちを持て余している部分がある」
「……話を聞くに相手は若い娘か? それも恋愛経験があまりないような」
「よくわかったね。その通りだ」
(短い会話からそんなヒントがあっただろうか? )と会話の内容を振り返るキュリオだが、どう見ても互いに戸惑っているような……そんなイメージがひしひしと伝わってくるエデンは微笑ましくキュリオを見つめる。
「キュリオ殿の愛に応えない者がいるとは思えんが、大事にしたい女性なら……」
「……なら?」
「相手の気持ちが追い付くまで待ってやるのが一番だろうな。愛を育むのはそれからの話だ。急ぎ過ぎると美しく咲く花もしおれてしまうぞ」
「……そうか……」
(……まだ赤子のアオイに私は一体何を……)
キュリオは納得したように目を閉じてクスリと笑った。エデンに話したことで負の感情の迷路から解き放たれ、心が軽くなった気がする。
「ありがとうエデン。君のおかげで何となくわかった気がするよ」
「ははっ俺がキュリオ殿に教えてやれることがあるとは正直思わなかったな。その想いが通じたら、いつか紹介してくれよ? キュリオ殿が選んだ女性なら本当に素晴らしい人だろうからな」
「あぁ、その時は必ず。君の恋人にも是非会わせて欲しい」
「もちろんだ。言っとくが俺の女は世界一だぜ?」
キュリオは笑いながらも”私のアオイの方が……”と心の中で秘かに反論したのだった。
――ふたりはまだ知らない。
運命の、分かれ道のひとつがすでに過ぎ去っていたことに――。