【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
――冷気をともなった灰色の靄が至るところに蔓延(はびこ)る冥王の城。マダラの家臣たちが深々と頭を下げる中をティーダは歩いている。


カツンカツン――……


冥王の大鎌により負傷した腕が外気に触れ、血に濡れた傷口からは体温が流れ出るようなひんやりとした風を肌に感じる。

「…………」

傷ついた腕に目を向けて思い出すのは、悲しみに暮れるアオイの泣き顔だった。

「まぁまぁ深い傷だったな……」

生まれて間もない透けるような肌に刻まれたそれは、まるで雪原に散った真紅の花弁のように美しかった。
しかし流れ出る真紅の花弁の量からかなりのダメージであることがわかり、獲物(お気に入り)を傷つけられたティーダが黙っているはずがない。

そしてその傷をつけたのは――

「城の中で悠久の民に狙われるなんて……お前、どういう境遇にいるんだよ……」

そう呟きながら己の傷口を舐めたティーダだが、ひとつの違和感に眉をひそめる。

「……?」

(……傷が、ない?)

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