【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
大理石でつくられた巨大な広間の中を移動すると、やがて使い慣れた王専用の食卓が見えてきた。そこで家臣は頭をさげ下がっていく。
中央に銀の燭台と美しく彫刻されたキャンドルが輝き、その光が照らしているのは人の世界でいうバロック調の椅子とテーブルだった。王は特別な宴や会食以外、誰かと共に食事をとることはないため椅子はひとつしかない。
さらに近づくと、にこやかにキュリオの椅子をひいて腰をおろすよう促したのは給仕担当の女官だった。
「待たせたね」
「とんでもございません。ジル様や料理人たちが舞い上がっておりましたわ」
「……そうかい? 邪魔をしてしまったようで申し訳なく思っていたんだ」
「まぁまぁっ そんなこと万が一にも有り得ませんわ」
おそらく料理を取りに行った際、彼らと顔を合わせたのだろうと想像がついた。
口元を袖で隠しながら上品に笑う彼女。薄化粧した色白の美人だが、なかなかに気の強いところがある女官で、名をサーラという。キュリオは一部親しい従者を名前で呼ぶが、そこに女性は入らない。王が伴侶を持ってはならないということはないが、その気がない自分の意志をてっとり早く理解してもらうためにとった行動だった。
少しの座談のあと、使い慣れた椅子に腰を落ち着けると、ほどよい弾力が肌を押し返し主の体にぴったりと馴染む。そして、ほっと一息つくと食前酒にはじまり、ジルや他の料理人たちの自慢の一品が次々と運ばれてきた。
まず、いつものように食前酒に手を伸ばすと……
「……しばらく酒は控えたほうがよさそうだな」
小さく呟いたキュリオは伸ばしたその手を水の入った別のグラスへと移動させる。
中央に銀の燭台と美しく彫刻されたキャンドルが輝き、その光が照らしているのは人の世界でいうバロック調の椅子とテーブルだった。王は特別な宴や会食以外、誰かと共に食事をとることはないため椅子はひとつしかない。
さらに近づくと、にこやかにキュリオの椅子をひいて腰をおろすよう促したのは給仕担当の女官だった。
「待たせたね」
「とんでもございません。ジル様や料理人たちが舞い上がっておりましたわ」
「……そうかい? 邪魔をしてしまったようで申し訳なく思っていたんだ」
「まぁまぁっ そんなこと万が一にも有り得ませんわ」
おそらく料理を取りに行った際、彼らと顔を合わせたのだろうと想像がついた。
口元を袖で隠しながら上品に笑う彼女。薄化粧した色白の美人だが、なかなかに気の強いところがある女官で、名をサーラという。キュリオは一部親しい従者を名前で呼ぶが、そこに女性は入らない。王が伴侶を持ってはならないということはないが、その気がない自分の意志をてっとり早く理解してもらうためにとった行動だった。
少しの座談のあと、使い慣れた椅子に腰を落ち着けると、ほどよい弾力が肌を押し返し主の体にぴったりと馴染む。そして、ほっと一息つくと食前酒にはじまり、ジルや他の料理人たちの自慢の一品が次々と運ばれてきた。
まず、いつものように食前酒に手を伸ばすと……
「……しばらく酒は控えたほうがよさそうだな」
小さく呟いたキュリオは伸ばしたその手を水の入った別のグラスへと移動させる。