【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
「そ、そんなっ……日の光に耐性のあるヴァンパイアなんて……っもし、彼がキュリオ様御不在時に城に攻め込むようなことがあったら……どう、したらっ……」
「アレスうるさい」
「もっ、申し訳ありません……」
悲壮感を漂わせたアレスは立ち上がったと同時にダルドに叱られ、ションボリと項垂れてしまった。
そんな彼の不安を取り除くようにキュリオが口を開く。
「ティーダと戦えとは言わない。君の役目はアオイの保護と彼女の遊び相手……いや、教育係というべきだな」
「ですなぁ。キュリオ様御不在時には儂が城におる。アレス、お主は姫様に異変が起こらぬか見守り、お助けする立場にあるということじゃよ」
のんびりとした口調のガーラントが終始笑みを絶やさずアレスを包み込むが、姫君を守るという大役に押しつぶされそうなアレス。
「は、はい……、わかりました……」
幼い魔導師を落ち着かせようと、キュリオはその小さな肩に手をのせ微笑んだ。
「それに彼女に付き添うのは君だけじゃない。カイも一緒だ。私は君たち二人にとても期待している」
「……カイも、でございますか?
……姫様をお守りする重要なお役目、本当に私たちで……よろしいのですか?」
「もちろんだよ。むしろ私は君たち以外の適任者はいないと踏んでいる。私の大切な娘をお願いできるかい?」
「……キュリオ様……」
(……大切なアオイ様を私たちにお任せしてくださるなんて……、その御心に応えずしてキュリオ様をお助けすることなんてできない……)
震える小さな拳を握りしめ、アレスは意を決したように表情を引き締めて宣言する。
「……っかしこまりました!!
このアレス、全身全霊をかけてアオイ姫様をお守りさせていただきますっっ!!」
アレスの良い返事を受け、ふっと柔らかい表情を浮かべたキュリオとガーラント。
「話はまとまった?」
三人の雰囲気から準備が整ったと理解したダルドは左手に魔導書をのせ、ゆっくり立ち上がりアレスの前へ歩みを進める。
「あぁ、待たせたねダルド。よろしく頼む」
キュリオの頷きを以てダルドがその右手を魔道書へ翳(かざ)すと、無風のなかでバラバラと次々に開かれていくページ。
やがて、紫色の輝きが一際美しく光を放っている場所を目指したそれは、意志を持った生き物のように目的の場で動きを止めた。
ダルドは取り出した羽ペンで己の名を記し、同じようにアレスへと契約のサインを求める。
「アレス、ここへ君の名を」
「は、はいっ!!」
初めてみる不思議な光景にアレスの目は彼の手元にくぎ付けだった。
「本当によくぞあそこまで……あの魔導書を使いこなせるのはダルド殿くらいのものでしょうなぁ」
目を細めて立派な顎鬚をなでるガーラント。
例えその魔導書の文字が読めたとしても、おそらく魔導書は応えてくれない。
だからこそ、持ち主を選ぶ強い魔力を秘めたそれらは長年に渡り、この研究室で眠ったままのものが数多く本棚に収まったままなのである。
「アレスうるさい」
「もっ、申し訳ありません……」
悲壮感を漂わせたアレスは立ち上がったと同時にダルドに叱られ、ションボリと項垂れてしまった。
そんな彼の不安を取り除くようにキュリオが口を開く。
「ティーダと戦えとは言わない。君の役目はアオイの保護と彼女の遊び相手……いや、教育係というべきだな」
「ですなぁ。キュリオ様御不在時には儂が城におる。アレス、お主は姫様に異変が起こらぬか見守り、お助けする立場にあるということじゃよ」
のんびりとした口調のガーラントが終始笑みを絶やさずアレスを包み込むが、姫君を守るという大役に押しつぶされそうなアレス。
「は、はい……、わかりました……」
幼い魔導師を落ち着かせようと、キュリオはその小さな肩に手をのせ微笑んだ。
「それに彼女に付き添うのは君だけじゃない。カイも一緒だ。私は君たち二人にとても期待している」
「……カイも、でございますか?
……姫様をお守りする重要なお役目、本当に私たちで……よろしいのですか?」
「もちろんだよ。むしろ私は君たち以外の適任者はいないと踏んでいる。私の大切な娘をお願いできるかい?」
「……キュリオ様……」
(……大切なアオイ様を私たちにお任せしてくださるなんて……、その御心に応えずしてキュリオ様をお助けすることなんてできない……)
震える小さな拳を握りしめ、アレスは意を決したように表情を引き締めて宣言する。
「……っかしこまりました!!
このアレス、全身全霊をかけてアオイ姫様をお守りさせていただきますっっ!!」
アレスの良い返事を受け、ふっと柔らかい表情を浮かべたキュリオとガーラント。
「話はまとまった?」
三人の雰囲気から準備が整ったと理解したダルドは左手に魔導書をのせ、ゆっくり立ち上がりアレスの前へ歩みを進める。
「あぁ、待たせたねダルド。よろしく頼む」
キュリオの頷きを以てダルドがその右手を魔道書へ翳(かざ)すと、無風のなかでバラバラと次々に開かれていくページ。
やがて、紫色の輝きが一際美しく光を放っている場所を目指したそれは、意志を持った生き物のように目的の場で動きを止めた。
ダルドは取り出した羽ペンで己の名を記し、同じようにアレスへと契約のサインを求める。
「アレス、ここへ君の名を」
「は、はいっ!!」
初めてみる不思議な光景にアレスの目は彼の手元にくぎ付けだった。
「本当によくぞあそこまで……あの魔導書を使いこなせるのはダルド殿くらいのものでしょうなぁ」
目を細めて立派な顎鬚をなでるガーラント。
例えその魔導書の文字が読めたとしても、おそらく魔導書は応えてくれない。
だからこそ、持ち主を選ぶ強い魔力を秘めたそれらは長年に渡り、この研究室で眠ったままのものが数多く本棚に収まったままなのである。