【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
ちいさな国のちいさなお姫様のはなし ※
――とある昔々のおはなしです。
争いもなく、たくさんの花が咲き乱れ、あたたかな光が降り注ぐ小さな国がありました。
その地を見守るお姫様はとても心優しく、穏やかな瞳は愛に満ちあふれています。
彼女の加護を受けた聡明な人々は互いの手をとり、知恵を出し合ったことで国は急速に発展していきました。
しかし……永遠に続くと思った平和な日々はそう長くは続きませんでした。知恵をつけすぎた者たちの一部で弱い者イジメが始まってしまったのです。そしてそれは収まるどころか広がってしまいました。
心を痛めたお姫様は皆になかよくするよう呼びかけましたが、だれも聞いてくれません。
すると、悲しみに暮れるお姫様のもとへ異国の王子様のひとりがやってきました。彼はとても強く、太陽のように鋭い眼差しと猛る橙の髪がとても印象的です。
「ねぇ君、どうして泣いてるの?」
王子様は目の前で涙に沈む、ちいさなお姫様を心配そうに見つめています。
「……っ皆がけんかするの……」
泣きはらした彼女の目はとても赤く、まるで血の涙を流しているかのように見えます。そしてそう呟いた彼女はまた肩を震わせて俯いてしまいました。
しかしその言葉を聞いた王子様の反応はあっさりしています。
「ふーん。おかしな国だね……じゃあさ! こんなところ捨てて僕と一緒においでよ!」
「……え?」
明るい声とともに差し伸べられた手と、王子様の瞳を交互に見つめるお姫様は驚いたように泣くのを止めました。が……
「……ありがとう……っでもわたしはいっしょにいけない……」
悲しそうに目を閉じてしまったお姫様。彼女の目尻からまた涙があふれてしまいます。
「どうして?」
眉をひそめた王子様は片膝をつき、零れた涙を指先でぬぐってあげました。
「みんなを置いてわたしだけいけないよ……」
優しいお姫様の意志はとても固く、その場から動こうとしません。
「……じゃあ、どうすれば君は笑えるようになるの?」
「…………」
お姫様は考えました。考えて、また瞳から大粒の涙を流してしまいます。
「わからない……どうしたらいいかわからないの……」
「…………」
しばらく黙って聞いていた王子様は立ち上がり、光輝く武器を手にしながらこう言いました。
「なら……君を苦しめるこの国を……」
「僕が壊してあげる――」
争いもなく、たくさんの花が咲き乱れ、あたたかな光が降り注ぐ小さな国がありました。
その地を見守るお姫様はとても心優しく、穏やかな瞳は愛に満ちあふれています。
彼女の加護を受けた聡明な人々は互いの手をとり、知恵を出し合ったことで国は急速に発展していきました。
しかし……永遠に続くと思った平和な日々はそう長くは続きませんでした。知恵をつけすぎた者たちの一部で弱い者イジメが始まってしまったのです。そしてそれは収まるどころか広がってしまいました。
心を痛めたお姫様は皆になかよくするよう呼びかけましたが、だれも聞いてくれません。
すると、悲しみに暮れるお姫様のもとへ異国の王子様のひとりがやってきました。彼はとても強く、太陽のように鋭い眼差しと猛る橙の髪がとても印象的です。
「ねぇ君、どうして泣いてるの?」
王子様は目の前で涙に沈む、ちいさなお姫様を心配そうに見つめています。
「……っ皆がけんかするの……」
泣きはらした彼女の目はとても赤く、まるで血の涙を流しているかのように見えます。そしてそう呟いた彼女はまた肩を震わせて俯いてしまいました。
しかしその言葉を聞いた王子様の反応はあっさりしています。
「ふーん。おかしな国だね……じゃあさ! こんなところ捨てて僕と一緒においでよ!」
「……え?」
明るい声とともに差し伸べられた手と、王子様の瞳を交互に見つめるお姫様は驚いたように泣くのを止めました。が……
「……ありがとう……っでもわたしはいっしょにいけない……」
悲しそうに目を閉じてしまったお姫様。彼女の目尻からまた涙があふれてしまいます。
「どうして?」
眉をひそめた王子様は片膝をつき、零れた涙を指先でぬぐってあげました。
「みんなを置いてわたしだけいけないよ……」
優しいお姫様の意志はとても固く、その場から動こうとしません。
「……じゃあ、どうすれば君は笑えるようになるの?」
「…………」
お姫様は考えました。考えて、また瞳から大粒の涙を流してしまいます。
「わからない……どうしたらいいかわからないの……」
「…………」
しばらく黙って聞いていた王子様は立ち上がり、光輝く武器を手にしながらこう言いました。
「なら……君を苦しめるこの国を……」
「僕が壊してあげる――」