【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
動き始めた感情
階段を行くキュリオは赤ん坊に余計な振動を与えぬよう、ゆっくりと足をすすめる。ふと、この広い階段を彼女がひとりで下れるようになるのはいつだろう……と、思い描いている自分に驚いた。
「…………」
(一体私はどうしてしまったのだ?)
ミルクをあげ、胸に抱くことに幸せを感じ……共にひとつの景色を見たいと願う。
そして彼女の成長した姿を想像し、隣で微笑んでいる己の姿を容易に想像できた。
躊躇い半分、そんなことを考えているうちに月の光が燦々(さんさん)と降り注ぐ中庭に面した通路にたどりつく。
ここからでも見える色彩豊かな花の園。それらを囲むのは淡く輝く悠久の城。見事なコントラストはまるで額縁に飾られている絵画のようだ。そして穏やかな風が吹けば優しい花の香りと花びらが舞い、悠久の大地を駆け抜けていく。
「きゃぁ……っ」
遠くを見つめるキュリオの耳に赤ん坊の興奮したような声が届いた。
ハッとして腕の中に視線をうつすと、頬を染めた彼女が瞳をキラキラさせ景色に見入っている。
「ふふっ、ここが気に入ったかい?」
幼子はその言葉に再度はしゃぐような声をあげ、澄んだ瞳をキュリオに向けると見たこともない可愛らしい笑顔を見せる。
「……っ!」
一瞬言葉を失った悠久の王は、今までに持ち合わせたことのない感情を抱かせるこの幼子に不思議な巡り合わせを感じた。
「お前の笑顔は不思議だね、私の気持ちを高揚させる」
「この景色をどう感じるかでは……見る者の心が重要なのかもしれないな……」
変わり映えのない見慣れた風景さえも、初めて目にする愛しいもののようにキュリオの瞳にうつり――
そうさせたのは腕の中の小さな彼女の存在だと、彼は気づきはじめる。
――しかし、まだ誰も知らない。彼女が何者でどこから来たのか……。
この先、幕開いたこの物語は大きく動き始めるのだった――。
「…………」
(一体私はどうしてしまったのだ?)
ミルクをあげ、胸に抱くことに幸せを感じ……共にひとつの景色を見たいと願う。
そして彼女の成長した姿を想像し、隣で微笑んでいる己の姿を容易に想像できた。
躊躇い半分、そんなことを考えているうちに月の光が燦々(さんさん)と降り注ぐ中庭に面した通路にたどりつく。
ここからでも見える色彩豊かな花の園。それらを囲むのは淡く輝く悠久の城。見事なコントラストはまるで額縁に飾られている絵画のようだ。そして穏やかな風が吹けば優しい花の香りと花びらが舞い、悠久の大地を駆け抜けていく。
「きゃぁ……っ」
遠くを見つめるキュリオの耳に赤ん坊の興奮したような声が届いた。
ハッとして腕の中に視線をうつすと、頬を染めた彼女が瞳をキラキラさせ景色に見入っている。
「ふふっ、ここが気に入ったかい?」
幼子はその言葉に再度はしゃぐような声をあげ、澄んだ瞳をキュリオに向けると見たこともない可愛らしい笑顔を見せる。
「……っ!」
一瞬言葉を失った悠久の王は、今までに持ち合わせたことのない感情を抱かせるこの幼子に不思議な巡り合わせを感じた。
「お前の笑顔は不思議だね、私の気持ちを高揚させる」
「この景色をどう感じるかでは……見る者の心が重要なのかもしれないな……」
変わり映えのない見慣れた風景さえも、初めて目にする愛しいもののようにキュリオの瞳にうつり――
そうさせたのは腕の中の小さな彼女の存在だと、彼は気づきはじめる。
――しかし、まだ誰も知らない。彼女が何者でどこから来たのか……。
この先、幕開いたこの物語は大きく動き始めるのだった――。