【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
癒しの力
「……あ、あれが王様……?」
大きく外れたカイの予想。少年は激しく面を食らい、衝撃に瞬きも忘れて見入ってしまう。やがて気づいたアレスに肘でつつかれ、「失礼のないようにね」と小声で囁かれてしまった。
「お、おう……っ!」
自身に喝を入れるようにグッと拳を握りしめ背筋を伸ばす。すると、正面に立つガーラントを言葉を交わしていたキュリオの瞳が後方にいるカイを捉えた。
「君は……」
後方で立ち尽くす見慣れぬ少年の顔にはところどころ傷があり、小さいながらに勇敢さを秘めた真っ直ぐな瞳はまだ……判断の欠如や無謀さを併せ持つヤンチャな一面のある子供だということをキュリオは見逃さなかった。
「……私はキュリオ。君は剣士だね。名前を教えてくれるかな?」
小高い場所から降りてきた銀髪の王は楽しげな眼差しで少年へと問う。
「お、……俺っ! 見習い剣士のカイ!!」
「カイか。ブラストの幼い頃にどことなく似ている。これからもこの国のために君の力を貸してほしい」
目線を合わせるように片膝をついた彼の髪が絹糸のようにさらさらと揺れ、そのわずかな動きさえ優雅で美しく気品に溢れている。
「……あったりまえよ!! 俺に任せとけって!」
(王様……俺のこと見習いだって嫌な顔すると思ってた……)
「ふふっ、元気な子だ。期待しているよ」
カイの無礼な口の訊き方に肝を冷やすブラストと、キュリオの柔和な態度に目を細めるガーラント。
やがて握手を求めるように差し出されたキュリオの白く美しい手。カイはゆっくりした動作で己の手を近づけていくと――
しっかり握りしめられた手の平から体へ向かって流れる清らかな風を感じたカイはキョロキョロと己の体を見つめる。それはまるで細胞のひとつひとつが活性化するような……さらに鍛錬の疲れさえ吹き飛ぶような不思議な感覚に戸惑いが隠せない。
「なん、だ……これ……」
異変は外見にも表れて体は淡く光輝いており、傷や痣が跡形もなく無くなっていることに気がつく。何が起こったかわかっていないらしいカイをみたブラストがニカリと笑って答えた。
「よかったなカイ! 直(じか)にお力を注いでいただけるなんて滅多にないことなんだぞっ!!」
「……力……?」
(治癒の魔法ってもっと時間かかるんじゃねぇの……?)
いつの間にか離れていたキュリオの手と顔は先ほどよりも遠くにあるが……その姿はとても大きく、"王"とは何なのか……説明されずとも雲の上の存在なのだとわかった気がした――。
大きく外れたカイの予想。少年は激しく面を食らい、衝撃に瞬きも忘れて見入ってしまう。やがて気づいたアレスに肘でつつかれ、「失礼のないようにね」と小声で囁かれてしまった。
「お、おう……っ!」
自身に喝を入れるようにグッと拳を握りしめ背筋を伸ばす。すると、正面に立つガーラントを言葉を交わしていたキュリオの瞳が後方にいるカイを捉えた。
「君は……」
後方で立ち尽くす見慣れぬ少年の顔にはところどころ傷があり、小さいながらに勇敢さを秘めた真っ直ぐな瞳はまだ……判断の欠如や無謀さを併せ持つヤンチャな一面のある子供だということをキュリオは見逃さなかった。
「……私はキュリオ。君は剣士だね。名前を教えてくれるかな?」
小高い場所から降りてきた銀髪の王は楽しげな眼差しで少年へと問う。
「お、……俺っ! 見習い剣士のカイ!!」
「カイか。ブラストの幼い頃にどことなく似ている。これからもこの国のために君の力を貸してほしい」
目線を合わせるように片膝をついた彼の髪が絹糸のようにさらさらと揺れ、そのわずかな動きさえ優雅で美しく気品に溢れている。
「……あったりまえよ!! 俺に任せとけって!」
(王様……俺のこと見習いだって嫌な顔すると思ってた……)
「ふふっ、元気な子だ。期待しているよ」
カイの無礼な口の訊き方に肝を冷やすブラストと、キュリオの柔和な態度に目を細めるガーラント。
やがて握手を求めるように差し出されたキュリオの白く美しい手。カイはゆっくりした動作で己の手を近づけていくと――
しっかり握りしめられた手の平から体へ向かって流れる清らかな風を感じたカイはキョロキョロと己の体を見つめる。それはまるで細胞のひとつひとつが活性化するような……さらに鍛錬の疲れさえ吹き飛ぶような不思議な感覚に戸惑いが隠せない。
「なん、だ……これ……」
異変は外見にも表れて体は淡く光輝いており、傷や痣が跡形もなく無くなっていることに気がつく。何が起こったかわかっていないらしいカイをみたブラストがニカリと笑って答えた。
「よかったなカイ! 直(じか)にお力を注いでいただけるなんて滅多にないことなんだぞっ!!」
「……力……?」
(治癒の魔法ってもっと時間かかるんじゃねぇの……?)
いつの間にか離れていたキュリオの手と顔は先ほどよりも遠くにあるが……その姿はとても大きく、"王"とは何なのか……説明されずとも雲の上の存在なのだとわかった気がした――。