【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
出発
王の手元で輝く羽をガラス張りになっている杖の先の飾りへ近づけていくと、それは物体の壁をすり抜けるようにゆっくり吸い込まれていく。
時が経つのも忘れ、ふわりと浮いて光を放つその姿はなんとも幻想的で感嘆のため息がもれる。
「……キュリオ様! 加護の灯を持つ役を私にやらせていただけませんか!?」
いち早く我に返り、そう声をあげたのはアレスだった。ギョっとしたカイが驚いたようにアレスを見つめている。
すると、カイの師であるブラストが少しばかり煽るように愛弟子の好奇心をくすぐる。
「カイ、お前はいいのか?
……言っとくが<使者>として任務を賜るのは数年に一握りの者だけだ。それにあの灯を掲げることが出来るチャンスなんて滅多にないことなんだぞ?」
「……そ、そうなのか……!? お、俺も……やってみたい、な」
ブラストはニカッと満面の笑みを浮かべると少年ふたりの背中を押して声をあげた。
「よしっ! ふたりで受け取って来いっ!! 行きと帰りにわけて持てばいいんじゃないか!?」
「はいっっ!」
「おうっっ!!」
子供らしく元気よく返事したアレスとカイは"加護の灯"をもつキュリオの下へと走る。
「では君たちにお願いしよう。これを持つ者は先頭を歩くんだよ」
最初はアレスが持つことになり、その後ろ先輩<魔導師>ふたりが歩く。そして最後尾にはカイとブラストが並んだ。
「……お前は最後尾じゃというたのにのぉ……」
ガーラントはやれやれと顎鬚を撫で、ブラストに「まーまー!」と宥められている。過保護なガーラントに、積極的なブラスト。対照的なふたりも互いを補う上でとてもよい組み合わせかもしれない。
やがて美しい装飾がついた箱のなかへキュリオが書簡をおさめると、責任者である<教官>ブラストがそれを受け取る。
「必ずや任務を遂行し、キュリオ様の書簡を各国へ届けて参ります!」
箱を抱えたブラストは深く一礼し、アレスはキュリオから加護の灯を受け取る。見た目ほど重くはなく小さなアレスでも道中の負担にはならなそうだったが、責任の重さが圧し掛かる分、肩に力が入る。
「……これが加護の灯……」
キュリオの羽が放つ神秘的な輝きにアレスは魅入られている。いつまでも眺めていたいような、そんな不思議な感覚に囚われていた。
「それではキュリオ様っ! これより我ら<使者>五名! 出発いたします!!」
「あぁ、よろしく頼む」
微笑みを絶やさぬキュリオと、やや心配そうな目を向けているガーラントらに見送られた一行は、国の端にある外門まで馬で移動するのだった――。
時が経つのも忘れ、ふわりと浮いて光を放つその姿はなんとも幻想的で感嘆のため息がもれる。
「……キュリオ様! 加護の灯を持つ役を私にやらせていただけませんか!?」
いち早く我に返り、そう声をあげたのはアレスだった。ギョっとしたカイが驚いたようにアレスを見つめている。
すると、カイの師であるブラストが少しばかり煽るように愛弟子の好奇心をくすぐる。
「カイ、お前はいいのか?
……言っとくが<使者>として任務を賜るのは数年に一握りの者だけだ。それにあの灯を掲げることが出来るチャンスなんて滅多にないことなんだぞ?」
「……そ、そうなのか……!? お、俺も……やってみたい、な」
ブラストはニカッと満面の笑みを浮かべると少年ふたりの背中を押して声をあげた。
「よしっ! ふたりで受け取って来いっ!! 行きと帰りにわけて持てばいいんじゃないか!?」
「はいっっ!」
「おうっっ!!」
子供らしく元気よく返事したアレスとカイは"加護の灯"をもつキュリオの下へと走る。
「では君たちにお願いしよう。これを持つ者は先頭を歩くんだよ」
最初はアレスが持つことになり、その後ろ先輩<魔導師>ふたりが歩く。そして最後尾にはカイとブラストが並んだ。
「……お前は最後尾じゃというたのにのぉ……」
ガーラントはやれやれと顎鬚を撫で、ブラストに「まーまー!」と宥められている。過保護なガーラントに、積極的なブラスト。対照的なふたりも互いを補う上でとてもよい組み合わせかもしれない。
やがて美しい装飾がついた箱のなかへキュリオが書簡をおさめると、責任者である<教官>ブラストがそれを受け取る。
「必ずや任務を遂行し、キュリオ様の書簡を各国へ届けて参ります!」
箱を抱えたブラストは深く一礼し、アレスはキュリオから加護の灯を受け取る。見た目ほど重くはなく小さなアレスでも道中の負担にはならなそうだったが、責任の重さが圧し掛かる分、肩に力が入る。
「……これが加護の灯……」
キュリオの羽が放つ神秘的な輝きにアレスは魅入られている。いつまでも眺めていたいような、そんな不思議な感覚に囚われていた。
「それではキュリオ様っ! これより我ら<使者>五名! 出発いたします!!」
「あぁ、よろしく頼む」
微笑みを絶やさぬキュリオと、やや心配そうな目を向けているガーラントらに見送られた一行は、国の端にある外門まで馬で移動するのだった――。