【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

ヴァンパイアの王Ⅲ

闇へと消えた王の姿をぼんやりと眺めていた男は、ハッとしてまた大声で叫ぶ。

「どちらに行かれるかちゃんとおっしゃってから出かけてくださいよぉぉおおっ!!」

城の中の大部分の者がその声を聞きクスクスと笑っている。
気まぐれで、どこか少年っぽさを残した王と家臣らのこのやりとりは毎日のように繰り広げられていたため、これが日常茶飯事なのだが彼が向かった先はどこかわからない。


――冷たい風を肌に受けながら彼は自国の門をくぐり異空間へと飛び立っていた。
暗闇に光る紅の瞳が真っ直ぐ見据えた先では銀色に輝く巨大な水晶でつくられた門がそびえ立っている。

(……悠久か久しぶりだな)

不敵な笑みを浮かべたヴァンパイアの王はキュリオの治める地へと侵入しはじめていた――

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