【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

迫りくる影

――悠久の城の中庭で微笑みあう美しい銀髪の王と赤子の楽しそうな声が響いている。彼は小さな体を片腕で抱きしめ、満開の花々の間をゆっくり歩き、時折しゃがんで花を指差しながら腕の彼女へと何か話しかけている。
するとまだ言葉がわからないはずの幼子も、キュリオの笑みにつられるように先ほどから笑い声をあげていた。

「この花はお前に似ているね。小さく実に愛らしい」

淡いピンクの花をひとつ手折ると、キュリオは柔らかな彼女の髪にそれをさしてやる。

「あぁ、とても似合っている。そうだ……この花に似せた髪飾りをつくってもらおうか? それともドレスがいいかな?」

まだ他国からの返事が返ってきていないにも関わらず、キュリオが彼女を手放す気がないのは誰からみても一目瞭然だった。会話の内容からしても自分の子のように可愛がっている。

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