【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

特異質な神具

「血を吸うとかそんなところしか思い浮かばないけどなぁ……」

するとニカッと笑ったブラストがグッと指を突き立てる。

「さすがは俺の生徒だっ!! ヴァンパイアの王の神具には血と人のエネルギーで強化される厄介な能力を持っているんだぞ! くれぐれも気を付けろ!!」

「げっ!! なんか生き物みてぇなやつだなそりゃ……」

カイはおぞましいものを想像し、身震いしている。しかし、それがまたそれぞれに与えられた特別な武器であることから、半ば少し羨ましくもあった。

「俺には何かないのかな、そういう特別なやつ……」

カイは小さな両手を見つめ、ぎゅっと手のひらを握りしめた。
そして話に区切りがついたと思ったアレスは彼らを振り返り声をかける。

「教官、ずいぶん予定が遅れてしまっているようです。少し急ぎますがよろしいでしょうか?」

「ん?」

カイから視線を戻し、ブラストはアレスの言葉に首を傾げる。

「遅れてなんかいないぞ? どうしてそう思う」

「え? いえ……吸血鬼の国を訪れた際、すでに夜だったものですから……」

なるほど、とテトラたちと顔を見合わせるブラスト。そしてニカリと笑う。

「あの国には昼がないんだ! 永遠の夜の国と言えばいいのか!?」

「そう……なんですか?」

「へぇ……」

(いいな、こいつらの反応! まったく教え甲斐があるってもんだぜ!!)

ブラストは教官魂をくすぐられ、つい胸を張ってこたえてしまう。

「異空間から見れば規則正しく門が並んでるように見えるだろ? でもな、上も下のないような空間だからこそ門をくぐればまったく別の場所にでるってもんだ!! さっきの国の月はすごいでかかっただろ!!」

「そこまで見てねぇよ! もっと早く言えよな!!」

むくれるカイと、神妙な面持ちのアレス。

(知らないことばかりだ……)

言われてみれば確かにそうだった。アレスは注意深く観察していたつもりだったが、そこまで考えている余裕などなかった。そして単純なカイはもっと見ていなかったのは言うまでもない。

「だから時間のことは心配しなくていいぞ! ちゃんと予定通り進んでるからな!」

「わかりました。では歩調を変えず次の門へ向かいます」

ほっと息を安堵の息をついたアレスは次の門へと足を向ける。

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