【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
雷の王
(なんだこの感じ……見えない風に体が押されてるみたいだ……!!)
油断すれば仰け反ってしまいそうな体をやっとのことで踏ん張り、耐えていることを悟られないようにするのが精いっぱいなカイ。
「……これがっ、雷の王……」
ボソリと呟いた小さな剣士は彼の気迫の圧倒されながらも、先ほど感じた冥王とは違う別の強さのようなものを肌で感じている。
そして声をかけられたブラストは懐かしそうな笑みを浮かべ彼の前で深く一礼する。
「お久しぶりでございます! エデン王っ!!」
「あぁ」
彼が鮮やかな青い布地に銀色の刺繍の施された大きなマントを翻すと、大きな手が伸びて、顔をあげたブラストと固い握手を交わしている。
(……ブラスト教官はエデン王とお知り合いなのだろうか?)
ふたりの間に流れる穏やかな空気にアレスは安心し、ここぞとばかりに雷の王の顔を覗き見る。
他の王にお目にかかれるチャンスなど滅多にあるものではない。そして運よく拝見できたとしても、先ほどの冥界の王のように心を許してくれる者などいないからだ。
(この方が<革命の王>エデン様……)
彼は二十代後半ほどの見目を保っており、精悍な堀の深い顔立ちは彫刻を思わせる野性的な美貌を誇っていた。そして髪は力強い稲妻を連想させる癖のある短髪で、やや濃いめの橙色をしている。
そして、まじまじと見つめてくる小さな瞳に気が付いたエデンは視線をアレスとカイへと向け――
「ん? なんだチビ。俺の顔になんかついてるか?」
稲妻の地鳴りのような低い声で問われ、ふたりは慌てて姿勢を正す。
(しまった……! あまりにも不躾な……!)
アレスはとっさに別のことを考えた。言い逃れをするわけではないが、これは他国の王と違って彼の別名が二つあることが気になっていたからだ。
(死の国の王が<冥王>と呼ばれるのは恐らく通称で、別名は<心眼の王>だった……なら、雷の王の<革命の王>と<雷帝>も同じなのだろうか?)
「エデン王! ひとつお聞きしてもよろしいでしょうかっ!!」
緊張のため声が上ずりながらもアレスは思い切って質問してみることにした。王と会話が出来ることなど滅多にない。その興奮が後押ししているのか、いつになく積極的な彼が見え隠れする。
「なんだ? 言ってみろ」
腕組みをした雷の王は快諾し、アレスの言葉に耳を傾けている。
「あ、ありがとうございますっ!
<革命の王>と<雷帝>と呼び名が二つあられるのは何故でしょう……」
勢いに任せて言葉を発したアレスの語尾がだんだん弱くなる。それもそのはず、先ほどまで穏やかだったエデン王の顔が一瞬にして険しくなったからだ。
「……アレス、その質問は……」
慌てた様子のブラストがアレスを振り返り、前方のエデン王の様子をえらく気にしているように見えた。
油断すれば仰け反ってしまいそうな体をやっとのことで踏ん張り、耐えていることを悟られないようにするのが精いっぱいなカイ。
「……これがっ、雷の王……」
ボソリと呟いた小さな剣士は彼の気迫の圧倒されながらも、先ほど感じた冥王とは違う別の強さのようなものを肌で感じている。
そして声をかけられたブラストは懐かしそうな笑みを浮かべ彼の前で深く一礼する。
「お久しぶりでございます! エデン王っ!!」
「あぁ」
彼が鮮やかな青い布地に銀色の刺繍の施された大きなマントを翻すと、大きな手が伸びて、顔をあげたブラストと固い握手を交わしている。
(……ブラスト教官はエデン王とお知り合いなのだろうか?)
ふたりの間に流れる穏やかな空気にアレスは安心し、ここぞとばかりに雷の王の顔を覗き見る。
他の王にお目にかかれるチャンスなど滅多にあるものではない。そして運よく拝見できたとしても、先ほどの冥界の王のように心を許してくれる者などいないからだ。
(この方が<革命の王>エデン様……)
彼は二十代後半ほどの見目を保っており、精悍な堀の深い顔立ちは彫刻を思わせる野性的な美貌を誇っていた。そして髪は力強い稲妻を連想させる癖のある短髪で、やや濃いめの橙色をしている。
そして、まじまじと見つめてくる小さな瞳に気が付いたエデンは視線をアレスとカイへと向け――
「ん? なんだチビ。俺の顔になんかついてるか?」
稲妻の地鳴りのような低い声で問われ、ふたりは慌てて姿勢を正す。
(しまった……! あまりにも不躾な……!)
アレスはとっさに別のことを考えた。言い逃れをするわけではないが、これは他国の王と違って彼の別名が二つあることが気になっていたからだ。
(死の国の王が<冥王>と呼ばれるのは恐らく通称で、別名は<心眼の王>だった……なら、雷の王の<革命の王>と<雷帝>も同じなのだろうか?)
「エデン王! ひとつお聞きしてもよろしいでしょうかっ!!」
緊張のため声が上ずりながらもアレスは思い切って質問してみることにした。王と会話が出来ることなど滅多にない。その興奮が後押ししているのか、いつになく積極的な彼が見え隠れする。
「なんだ? 言ってみろ」
腕組みをした雷の王は快諾し、アレスの言葉に耳を傾けている。
「あ、ありがとうございますっ!
<革命の王>と<雷帝>と呼び名が二つあられるのは何故でしょう……」
勢いに任せて言葉を発したアレスの語尾がだんだん弱くなる。それもそのはず、先ほどまで穏やかだったエデン王の顔が一瞬にして険しくなったからだ。
「……アレス、その質問は……」
慌てた様子のブラストがアレスを振り返り、前方のエデン王の様子をえらく気にしているように見えた。