【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
近づく漆黒の翼
漆黒の翼を背に持つ彼がさらに身を乗り出すと、その背後から速度を上げて近づく悠久の者ではない気配に動きを止めた。
「……チッ」
次なる行動を制限された彼は舌打ちして軽く枝を蹴り、その場を離脱する。そして互いが視界へ入る前に奥にある大きな樹の陰にその身を隠した。
(この気配は……精霊か)
樹木の合間から目を凝らしてみると、小さな光の塊が真っ直ぐに悠久の城を目指し移動しているのが見えた。
『…………』
精霊王より書簡を預かった光の精霊は、視界の端のわずかな影の動きに気づいたものの自身の動きは止めず、意識のみをそちらに向けて――
『……紅の瞳の王……』
影の正体がわかった彼女は再び悠久の王の住まう城へと視線を戻すが、背後に感じるヴァンパイアの王の視線。
王として、彼は尊敬に値する存在なのだが……精霊王とヴァンパイアの王は懇意ではないため互いに距離を置いている。したがって、彼女がわざわざ挨拶に出向くほどの義理もないのだ。
「精霊王の使いか」
光の精霊が常に周りに目を光らせている忠実な腹心であることは知っていたため、おそらく気づかれていると判断した彼は、隠れることなくその小さな姿を追うことにした。
「……チッ」
次なる行動を制限された彼は舌打ちして軽く枝を蹴り、その場を離脱する。そして互いが視界へ入る前に奥にある大きな樹の陰にその身を隠した。
(この気配は……精霊か)
樹木の合間から目を凝らしてみると、小さな光の塊が真っ直ぐに悠久の城を目指し移動しているのが見えた。
『…………』
精霊王より書簡を預かった光の精霊は、視界の端のわずかな影の動きに気づいたものの自身の動きは止めず、意識のみをそちらに向けて――
『……紅の瞳の王……』
影の正体がわかった彼女は再び悠久の王の住まう城へと視線を戻すが、背後に感じるヴァンパイアの王の視線。
王として、彼は尊敬に値する存在なのだが……精霊王とヴァンパイアの王は懇意ではないため互いに距離を置いている。したがって、彼女がわざわざ挨拶に出向くほどの義理もないのだ。
「精霊王の使いか」
光の精霊が常に周りに目を光らせている忠実な腹心であることは知っていたため、おそらく気づかれていると判断した彼は、隠れることなくその小さな姿を追うことにした。