【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
予想外の結末
呼吸することも忘れ、書状に目を向けたまま動きを止めたキュリオ。すると様子を伺っていたガーラントがただならぬ異変に気づき、声をひそめる
『休憩を挟みましょう』
大魔導師の声よりさらに低く、まるで自分に言い聞かせるように唱えるキュリオ。
『彼女(アオイ)はこの悠久に生まれた愛する民であり、私の娘だ。いいな」
『……仰せのままに』
王の声色から雷の国の返答が何だったか容易に想像できてしまったガーラントは、キュリオの言葉に頷くと深く一礼し視線を戻す。
「内容に不備などなかった。迅速な対応に心から感謝している。エデンと大臣に礼を言っておいておくれ」
「必ずお伝えいたします。では、我々はこれで失礼いたします」
またも足並みをそろえ一礼し、力強い歩みで立ち去る使者たち。雷の国は規律正しく、統制のとれた国だと聞くが実にその通りだった。
キュリオの指示で数人の家臣たちが彼らを見送るため広間を出て行くと、急いで元居た場所へ整列しなおすブラストたち。するとそんな彼らに近づいたのはガーラントだった。
「お主ら、使者の務め本当にご苦労じゃったな。四ヵ国の返答が出そろった今、使者の役目は十二分に果たしたと言っていいじゃろう。お前たちを労って別の部屋に食事が用意されておるでな、ゆっくりしてくるといい」
「本当かっ!?」
大魔導師の言葉に喜びの声を発したのはカイだった。そして色々と質問を用意していたアレスは、ガーラントが話に取り合ってくれる感じではないことを悟ると渋々頷く。
「わかりました……」
落胆した様子の愛弟子を目にした彼は、小さな肩に手を置くと、視線を合わせながら気遣いを見せる。
「すまんのぉアレス。今回のこと、なにか思うところがあったんじゃろう? 話は必ず聞くでな、また時間をとろう」
豪華な食事よりも知識を得ることに魅力感じるアレスは、その言葉に元気よく言葉を発した。
「ありがとうございますっ! 先生!!」
にこやかに彼らを見送るガーラントは広間の扉が閉まると、急いで王の傍へと引き返してくる。
「気を遣わせてしまったね」
予想していなかった結末だけに彼の衝撃はかなりのものらしく、遠くを見つめる眼差しは赤子への問いかけのように感じた。
「とんでもございませぬ。それよりキュリオ様、一度部屋へお戻りになりませんか? ここでは人目もありますゆえ――」
先ほどから王や大魔導師のただならぬ雰囲気を感じとり、オロオロしている家臣や女官たちが心配そうにこちらの様子を伺っている。しかし、そんな様子も気にしないとばかりにキュリオは口を開いた。
「……あぁ。私の可愛いアオイが眠りから覚めているかもしれないね」
『休憩を挟みましょう』
大魔導師の声よりさらに低く、まるで自分に言い聞かせるように唱えるキュリオ。
『彼女(アオイ)はこの悠久に生まれた愛する民であり、私の娘だ。いいな」
『……仰せのままに』
王の声色から雷の国の返答が何だったか容易に想像できてしまったガーラントは、キュリオの言葉に頷くと深く一礼し視線を戻す。
「内容に不備などなかった。迅速な対応に心から感謝している。エデンと大臣に礼を言っておいておくれ」
「必ずお伝えいたします。では、我々はこれで失礼いたします」
またも足並みをそろえ一礼し、力強い歩みで立ち去る使者たち。雷の国は規律正しく、統制のとれた国だと聞くが実にその通りだった。
キュリオの指示で数人の家臣たちが彼らを見送るため広間を出て行くと、急いで元居た場所へ整列しなおすブラストたち。するとそんな彼らに近づいたのはガーラントだった。
「お主ら、使者の務め本当にご苦労じゃったな。四ヵ国の返答が出そろった今、使者の役目は十二分に果たしたと言っていいじゃろう。お前たちを労って別の部屋に食事が用意されておるでな、ゆっくりしてくるといい」
「本当かっ!?」
大魔導師の言葉に喜びの声を発したのはカイだった。そして色々と質問を用意していたアレスは、ガーラントが話に取り合ってくれる感じではないことを悟ると渋々頷く。
「わかりました……」
落胆した様子の愛弟子を目にした彼は、小さな肩に手を置くと、視線を合わせながら気遣いを見せる。
「すまんのぉアレス。今回のこと、なにか思うところがあったんじゃろう? 話は必ず聞くでな、また時間をとろう」
豪華な食事よりも知識を得ることに魅力感じるアレスは、その言葉に元気よく言葉を発した。
「ありがとうございますっ! 先生!!」
にこやかに彼らを見送るガーラントは広間の扉が閉まると、急いで王の傍へと引き返してくる。
「気を遣わせてしまったね」
予想していなかった結末だけに彼の衝撃はかなりのものらしく、遠くを見つめる眼差しは赤子への問いかけのように感じた。
「とんでもございませぬ。それよりキュリオ様、一度部屋へお戻りになりませんか? ここでは人目もありますゆえ――」
先ほどから王や大魔導師のただならぬ雰囲気を感じとり、オロオロしている家臣や女官たちが心配そうにこちらの様子を伺っている。しかし、そんな様子も気にしないとばかりにキュリオは口を開いた。
「……あぁ。私の可愛いアオイが眠りから覚めているかもしれないね」