【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
まるで赤ん坊の言葉を理解しているようにキュリオが微笑む。
彼は広い湯船のなか、夜空を見渡せる開けた場所まで歩き――
外気が頬をかすめるとゆっくり腰をおろした。
「……これなら湯渡りもしないだろう」
赤ん坊の吸い付くような肌を手のひらに感じながら、具合を確かめようとゆっくり体を撫でる。
「大丈夫、悪いところは何もない」
彼女もキュリオの言葉を理解しているのか、それとも穏やかな笑顔に安心したのか……先ほどから機嫌よさげに笑い声をあげている。
「…………」
そんな純真な笑顔をみた空色の瞳は真剣さをおび、やがて悲しそうに眉間へ皺をよせた。
「お前の父と母はどこにいるんだろうね……こんなに可愛いお前を置き去りにするなんて……」
ピチャ――と水音が響き、キュリオの周りを波紋が広がる。
もしかしたら子供を手放さなくてはならない余程の事情があったかもしれない。
しかし国や人々は潤い、捨て子など最近は存在していなかったほどに豊かなのだ。城のそばにある孤児院でさえ、両親に先立たれた身寄りのない子らで、この赤子と同じ境遇の子は誰ひとりいない。
なにも知らぬであろうこの純粋無垢な赤ん坊が不憫でならないキュリオは、その小さな体をそっと抱きしめた。
――すると彼女の手が躊躇いがちに胸元へ伸びてきて……
「心配はいらないよ。私が傍にいる……」
キュリオは赤ん坊の不安を全身で受け止めようと腕に力を込めた。
彼は広い湯船のなか、夜空を見渡せる開けた場所まで歩き――
外気が頬をかすめるとゆっくり腰をおろした。
「……これなら湯渡りもしないだろう」
赤ん坊の吸い付くような肌を手のひらに感じながら、具合を確かめようとゆっくり体を撫でる。
「大丈夫、悪いところは何もない」
彼女もキュリオの言葉を理解しているのか、それとも穏やかな笑顔に安心したのか……先ほどから機嫌よさげに笑い声をあげている。
「…………」
そんな純真な笑顔をみた空色の瞳は真剣さをおび、やがて悲しそうに眉間へ皺をよせた。
「お前の父と母はどこにいるんだろうね……こんなに可愛いお前を置き去りにするなんて……」
ピチャ――と水音が響き、キュリオの周りを波紋が広がる。
もしかしたら子供を手放さなくてはならない余程の事情があったかもしれない。
しかし国や人々は潤い、捨て子など最近は存在していなかったほどに豊かなのだ。城のそばにある孤児院でさえ、両親に先立たれた身寄りのない子らで、この赤子と同じ境遇の子は誰ひとりいない。
なにも知らぬであろうこの純粋無垢な赤ん坊が不憫でならないキュリオは、その小さな体をそっと抱きしめた。
――すると彼女の手が躊躇いがちに胸元へ伸びてきて……
「心配はいらないよ。私が傍にいる……」
キュリオは赤ん坊の不安を全身で受け止めようと腕に力を込めた。