【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を
初めての痛み
一方的にキュリオが話かけるだけで、彼女からはにこやかな微笑みが返ってくるばかりの夕食だったが、そんなことにも幸せを感じずにはいられない。
「今はまだミルクしか口にできないが、そのうち好みが出てくるだろうね」
優しくアオイの口元をぬぐいながら勝手に想像が膨らんでいく。
「庭の花から茶葉が採れるんだ。是非お前にも紅茶の素晴らしさを知ってもらいたい」
キュリオは目の前のカップを持ち上げ、アオイの目の前へ持って行き、花びらの浮かぶ香り豊かな淹れたての紅茶をかがせてみる。
「……?」
彼のその行動が何を意味するのか幼い彼女はまだ理解していない様子で、ただ揺れる色のついた水面を覗き込みながら瞳を瞬かせている。
「どうだい? よい香りがするだろう?」
アオイの顔を覗きこむキュリオだが、次の瞬間その穏やかな表情が驚きに変わった。
彼女の小さな手がカップの中の揺れる花びらを掴もうと、その指先を投げ込んでしまったからだ。
「……っ!」
目を見開いたキュリオの反応のほうが一瞬遅く、ピチャと音を立て、紅茶にダイブしたアオイの指先。慌てたキュリオは勢いよく椅子から立ち上がり、ガシャンと勢いよくソーサーにカップを押し込む。そして口をぬぐうために置いてあったナプキンに水の入ったグラスを傾け濡らすと、わずかに赤くなったアオイの指先を優しく包んだ。
「…………」
その様子をじっと見つめているアオイ。
いくら熱湯ではないといえ、生まれて間もない赤子の柔らかい皮膚には大変なダメージのはずだ。
「……すまない、アオイ。私の責任だ……」
自責の念に押しつぶされてしまいそうなほど悲痛な面持ちを浮かべるキュリオ。彼女の指先を押える右手はわずかに震えており、彼の優しさが痛いほど伝わってきた。
そして痛みを感じないはずがないアオイだが、彼女はまったく声もあげずキュリオの顔を見上げて穏やかな笑みを浮かべている。
「痛くないのかい……?」
まさかと思いながら、指先を包んでいたナプキンを持ち上げ中の様子を伺う。
(やはり赤くなっている……痛まないはずがない)
「今はまだミルクしか口にできないが、そのうち好みが出てくるだろうね」
優しくアオイの口元をぬぐいながら勝手に想像が膨らんでいく。
「庭の花から茶葉が採れるんだ。是非お前にも紅茶の素晴らしさを知ってもらいたい」
キュリオは目の前のカップを持ち上げ、アオイの目の前へ持って行き、花びらの浮かぶ香り豊かな淹れたての紅茶をかがせてみる。
「……?」
彼のその行動が何を意味するのか幼い彼女はまだ理解していない様子で、ただ揺れる色のついた水面を覗き込みながら瞳を瞬かせている。
「どうだい? よい香りがするだろう?」
アオイの顔を覗きこむキュリオだが、次の瞬間その穏やかな表情が驚きに変わった。
彼女の小さな手がカップの中の揺れる花びらを掴もうと、その指先を投げ込んでしまったからだ。
「……っ!」
目を見開いたキュリオの反応のほうが一瞬遅く、ピチャと音を立て、紅茶にダイブしたアオイの指先。慌てたキュリオは勢いよく椅子から立ち上がり、ガシャンと勢いよくソーサーにカップを押し込む。そして口をぬぐうために置いてあったナプキンに水の入ったグラスを傾け濡らすと、わずかに赤くなったアオイの指先を優しく包んだ。
「…………」
その様子をじっと見つめているアオイ。
いくら熱湯ではないといえ、生まれて間もない赤子の柔らかい皮膚には大変なダメージのはずだ。
「……すまない、アオイ。私の責任だ……」
自責の念に押しつぶされてしまいそうなほど悲痛な面持ちを浮かべるキュリオ。彼女の指先を押える右手はわずかに震えており、彼の優しさが痛いほど伝わってきた。
そして痛みを感じないはずがないアオイだが、彼女はまったく声もあげずキュリオの顔を見上げて穏やかな笑みを浮かべている。
「痛くないのかい……?」
まさかと思いながら、指先を包んでいたナプキンを持ち上げ中の様子を伺う。
(やはり赤くなっている……痛まないはずがない)