会いたい
第4話 お世話になってます。
とある日の事務所。

「MAKIさん、これ誰にあげるんですか?」

TAKAHIROが色紙にサインを書いている。

「ん?あぁ、今ちょっとお世話になってる人の子供」

「へぇ、名前は?」

「名前?んー、聞いてないから、無しでいっか」

「じゃあ、これ」

TAKAHIROは、MAKIDAIに色紙を渡す。

「また、MAKIさんのお得意のサプラ〜イズって感じっすか?」

「まぁね、サンキュー」

MAKIDAIは、ニコニコしながら色紙を受け取る。

「じゃ、また」

早々にTAKAHIROに挨拶をして、次は、アパレル部門へ行く。

「あ、MAKIさん。頼まれてたTシャツ揃ってますよ」

「ありがとうございますっ」

「デザインは、これでよかったですよね。」

「そうそう、オッケーです」

「じゃ、キッズ1枚とレディス2枚ですね。わざわざ、自分で手配するなんて身内の方の分ですか?」

女性社員がTシャツを渡す。

「いや、ちょっと知り合いにね。ありがとうございます」

MAKIDAIは、ご機嫌でTシャツを受け取る。

MAKIDAIが大事そうに色紙とTシャツを紙袋に入れていると、

「誰にあげるの?」

と工藤が声を掛けて来た。

「ああ、楓さんにね」

「楓さん?」

「うん、今度差し入れ持って来てくれるっていうから」

「ん〜、弁当のお礼にしては、豪華じゃん」

「それだけじゃなくて、こっちがオファーして指導して貰ってるのに、ついでだからって費用はいらないっていうし」

「あぁ、そうだよな。でも、今度の北海道のライブ、全部お前が費用負担するって」

「あぁ、それくらいは出して当たり前じゃん。ライブって言っても仕事込みだしさ。それに楓さんの子供達も俺らのファンだって聞いたから、喜んで貰えるかなと思って」

「え、この前は楓さんが子持ちだったってショック受けてたのに、今度は子供の気を引こうって作戦?」

「そんなんじゃないけど」

MAKIDAIが笑ってごまかす。

「まぁねぇ、楓さん、子持ちでも全然イけてるし、まぁ、一応シングルな訳だしね。俺も
独身だったらなぁ」

「工藤ちゃん、楓さんは俺のファンだからさ」

MAKIDAIが余裕な顔でそういうと工藤は、嫌味っぽく、

「あーあ、これキャンセルしよっかなぁ、北海道行きの飛行機とホテル」

とスケジュール表をチラつかせる。

「あ、北海道の、手配済み?おー、サンキュッ」

MAKIDAIは、それを受け取ると嬉しそうに確認する。
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