会いたい
エレベーターが3階で止まり、ドアが開く。

エレベーターから降りると楓は、

「うわぁ〜」

と言ってぐるりと見回す。

「本物だ」

いつになくソワソワしている楓。

「そんなに喜んで貰えるなら、後で、2階も案内しますよ」

「え?いいんですか?嬉しいっ」

楓の興奮する姿を見てMAKIDAIも嬉しそうだ。

「じゃあ、こっちの部屋にどうぞ」

「はい」

楓は、ソワソワしながら案内された部屋に向かう。

自分が何をしに来たのかも忘れそうだった。

椅子に腰掛け、少し落ち着くとやっと本題を思い出す。

「あ、お弁当、渡してもいいんですか?」

「ありがとうございます」

MAKIDAIは、待ってましたとばかりに満面の笑みで受け取る。

「あの、張り切り過ぎて沢山作っちゃったので…重いかも」

袋がずっしり重い。

MAKIDAIは、楓が張り切っている姿を想像する。

「あの、家で作って来た常備菜も何種類か入ってるんで、冷蔵庫で保存して一週間以内で食べて下さいね」

「うわ、美味そぉ。急に腹減ってきた気がする」

MAKIDAIは、中身を見て喜ぶ。

「好みの味か分からないですけど、身体にいいものばかりだから」

「いえ、手作りの物は、実家帰った時位しか食べれないから本当に嬉しいです」

今すぐ食べたい位だ。

コンコンッ。

ノックする方を見ると、すりガラスに人影。

「あ、工藤ちゃんかな?どうぞ〜」

「お邪魔しまーす」

工藤が現れた。

「お疲れ〜」

「お疲れ様です」

軽いノリの工藤に楓は丁寧に会釈する。

「楓さんは、いつも礼儀正しいね」

椅子に腰掛けながら工藤が言う。

「誰かさんみたいに軽いノリじゃないから」

MAKIDAIは、楓を誉めるように言う。

「いや、俺だって、いつもこうじゃないよ。楓さんには親近感を持ってるから…」

「まぁ、まぁ、工藤ちゃんの話はいいからさ、札幌のスケジュール早く楓さんに見せて」

言い訳をしようとする工藤をなだめてMAKIDAIは、先日約束した北海道公演の打ち合わせをしたいようだ。
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