会いたい
「俺の顔を見て」

MAKIDAIの身体を支えながら、楓がMAKIDAIの顔をみた。

MAKIDAIはじっと楓のことを見つめ、

「俺にとっても、楓さんは大事な人です。1ファンとしてじゃなく、仕事の仲間だけじゃなく、一人の女性として」

その言葉を聞いて嬉しいはずの楓だが、苦しそうなMAKIDAIが心配でまた目が潤んでしまう。

「でも、大事な人をこんな目に合わせて、本当ゴメン」

楓は、首を横に振る。

「もう、いいから、横になって」

「…いや、大丈夫。はぁ、はぁ…」

これが、MAKIDAIの精一杯の気持ちだった。

楓にお詫びと感謝の気持ちと誰よりも楓を大事に思っているという気持ちをMAKIDAIなりに表しているつもりだ。

そして少しの間、見つめあっていたかと思うと、

MAKIDAIの唇が楓の唇に触れる。

楓は心臓がバクバクして、息がとまりそうだった。

「はぁっ、はぁっ」

MAKIDAIが息を切らして胸を押さえる。

「大丈夫っ?」

楓は、MAKIDAIのことを心配して違う意味で心臓がバクバクする。

「大丈夫、大丈夫っ。怪我も痛むけど…キスが気持ち良くて…」

MAKIDAIはそう言って、ニヤッと笑った。

「気持ち…いい?」

楓は、一瞬止まったが恥ずかしそうに俯く。

「キスするの久しぶり過ぎて…」

MAKIDAIは胸に手を当て、痛みを堪えながら笑う。

「久しぶり?」

楓が素朴な質問をする。

「何年ぶりかな?なんかの撮影の時以来かなっ、はぁ、はぁっ」

「あ、もう、横になって」

「うん、はぁ…はぁ…」

MAKIDAIが横になると、

「久しぶりって…、恋人とか…」

「ん、いるように見えた?」

「…ううん、見えなかったけど、…芸能人だから隠したりしてるのかな、って」

「本当にいないよ。んー、恋人いない歴何年かなぁ」

「…そうなんだ」

「うん」

会話が途切れ、静かになる。
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