会いたい
「疲れてない?今日も仕事だったでしょ」

「うん、でも新幹線の中で少し休めたから大丈夫よ」

MAKIDAIが楓を気遣う。

「MAKIDAIさんこそ、具合はどう?」

「うん、順調に回復してるよ」

「そう、よかった。夜は眠れるようになった?」

MAKIDAIは寝つけない夜、楓の声が聞きたいと電話をして来ていた。

「うん、始めの頃は痛みのせいもあったからね、ちょくちょく目が覚めてたけど、随分長く眠れるようになったかな」

MAKIDAIは、事故其の物の記憶がほとんどないが痛みに苦しんでいた記憶が鮮明に残っていた。

「楓さんは?」

「まだたまに、目が覚めるかな。普段は疲れて眠るから、ほとんど夢なんて覚えてないんだけどね。事故の後は、同じ夢で目が覚めるの。MAKIDAIさんが苦しんでるその隣で私は何も出来なくてただ泣いてるだけ、っていう夢」

楓も、軽傷ではあったが記憶が鮮明に残っていた為、夢にうなされて眠れない夜があった。

MAKIDAIは悲しそうな表情で楓の手を取り、握りしめる。

「大丈夫よ、MAKIDAIさん。こういうのは日にち薬だから…」

楓は両手でMAKIDAIの手を握り返し、優しく微笑む。

MAKIDAIは思わず、その手を引き寄せ楓を抱きしめた。

「楓さん…」

抱きしめられドキドキしながら、MAKIDAIの胸は、温かくて落ち着くと思った。

「MAKIDAIさん、こうしてたら、ぐっすり眠れそう。目が覚めてもMAKIDAIさんがそばにいれば、安心してまた眠れる」

楓のホッとしたというような声を聞いて、MAKIDAIもホッとする。

「じゃあ、今日はゆっくり眠れるね」

MAKIDAIの言葉を聞いて、楓は、

「あ…」

自分から一晩中、抱き合って眠るかのような発言をしてしまったと気付き、赤面する。

「あのっ、私…何言ってるんだろ、やだ」

慌てる楓を見てMAKIDAIはニヤっとしながら、

「一晩中、抱きしめてていい?っていうか、そのつもりだったけど」

楓は、想像はしていたものの、いざとなると、恥ずしさでいっぱいになってしまう。

「あ、はい…、嬉しい…です。…でも、私寝相が悪かったらどうしよう」

「えっ、寝相悪いの?」

「あ、違うっ、あの、ひとりで寝てる時みたいに寝返りしたら、MAKIDAIさんに体当たりしちゃうかもしれないし…」

「いや、でも、ベット一台しかないから…」

「だよね…」

二人は顔を見合わせ、苦笑いした。
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