神様修行はじめます！ 其の五

「やっと来たか。では速やかに配置につきたまえ」


　手に持った扇子で自分の隣をビシッと指し示し、門川君が指揮官よろしく、厳かに命令を下す。


『配置』って……。門川君、あなた絶対に『婚約発表』の正確な意味、わかってないでしょ？


　という心のツッコミはさて置いて、とりあえず言われた通りに、あたしは門川君の隣に腰をおろした。


　途端に、


『我ら当主たちですら座ることの許されぬ場所に、お前ごときが座んじゃねえよケンカ売ってんのかゴラァぁぁ！』


　的な、どギツイ視線が一極集中する。


　威力バツグンの視線攻撃に、あたしの体は驚いたときのフクロウみたいに、シュッと細くなってしまった。


　ひえぇ～、皆さん、揃いも揃ってすっげー目付きだわ。ドンヨリしちゃって、血走った両生類みたい……。


　まるで、悪い魔女に暗黒魔法をかけられたカエルの群れだよ。


「よく聞いてほしい。いま僕の隣に座る天内里緒こそが、僕が自分の花嫁として選んだ人物だ」


　感情の起伏をまるで感じさせない、淡々とした声で門川君が宣言する。


「皆、よしなに頼む」