神様修行はじめます! 其の五
 頓狂な声を上げるあたしの問いに、誰も答えない。


 みんな息を凝らして、クレーターさんの顔面蒼白になってしまった顔を見つめている。


 うかつな扱いをすれば、人ひとりの命が吹っ飛ぶほどの家宝が、よりによって破壊されてしまった。


 おまけに、門川君と水園さんがいたこの庵の中に、水絵巻は許可もなく運び込まれていた。


 そして水絵巻はどこにも見当たらず、門川君と水園さんのふたりは……そろって姿を消した。


「な、なんか……その先のこと、あんまり考えたくないんだけど……」


 手の平に嫌な汗がじわりと浮き出てくる。


 答えに行き着きたくない疑問が、どうしても頭をかすめた


『いったい誰が、水絵巻を破壊してしまったの?』


 門川君と水園さんの失踪事件が、どんどん異常事態に発展してる気がする。


 ふたりを見つけて、叱り飛ばして、こっそり連れ帰りさえすれば問題は解決すると思っていたのに。


 もしも水絵巻の破壊にふたりが関与していたとするなら、単純に連れ帰っただけじゃ解決しない。


 というよりも、ふたりを見つけちゃった方が、かえってヤバイ事態に陥るんじゃ?


 神器レベルの家宝を壊して、

『あらまぁまぁ、永久君たら壊しちゃったのぉ? ダメね、まったくもう』

 じゃ済まないだろう。それは絶対、いくら門川当主でも。


 いや、門川当主だからこそ、その門川家伝来の家宝をみずから破壊してしまった責任は、重大だ。


 タダじゃ済まない。絶対に生半可で済むはずがない。
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