神様修行はじめます! 其の五
 探さないでほしいと言っていた水園さんの言葉が脳裏に甦る。


 なんの手がかりも残さず、姿を消した門川君の思惑も。


 つまりそれって、こういう事情だったの……?


 だったらあたしたち、このまま門川君探索隊なんか続けていてもいいの?


 見つけ出されて、連れ戻された門川君が、責任を取って当主の座を引きずり降ろされたりしたら?


 クレーターさんや水園さんや、ご親戚一同が、死罪になっちゃったら?


 まさか、門川君まで死罪になっちゃうとか!? あぁ、もしもそんなことになったら……!


 どうしよう。どうしよう。どうすればいい? どうするべき!?


「こうなれば一刻も早く、永久を見つけ出すぞ」


「え!? み、見つけちゃうのぉ!?」


 門川君を探さない方針にベクトルが向きかけていたあたしの思考を、あっさり断ち切る絹糸の言葉。


 相変わらずの冷静沈着極まるその声に、あたしは動揺の極致で答える。


「ででででも! 見つけちゃったら、すっごいヤッバイことになるんじゃない!?」


「このまま放っておいた方が、よほどヤッバイわい」


「だ、だって……」


「天内のお嬢様、わたくしたちが把握している正確な情報は、『水絵巻の破壊』。この一点のみなのでございます」


 絹糸に負けず劣らず、冷静そのものの態度で、セバスチャンさんがあたしを諭す。


「つまり、どういった経緯で、誰が水絵巻を破壊したのか、真実はなにも分かっていないのです」


「本当は、永久や水園に非はないのやもしれぬ。だがこのままふたりが雲隠れしたままでは……」


「いずれ露見した際に、余計に永久様たちの責任が、問われかねないのでございます」
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