神様修行はじめます! 其の五
 ただ逃げ隠れしているだけの門川君?


 ホントだ。そんなのぜんぜん似合わない。というより、ありえない。


『自慢じゃないが、僕は粘り強くてしぶとい』


 彼はあたしにそう言った。命懸けの戦いの中で絶体絶命に陥ったときも、決して諦めなかった。


 諦めるどころか、あっさり死を覚悟したヘナチョコなあたしに向かって、足で大量に砂ブッかけながらギャンギャン怒鳴り散らしてたツワモノだ。


 そんな彼が家宝とはいえ、たかがテーブルひとつが壊れたくらいで、ビビって逃げ回るようなブザマなことはしない。


 門川君だもん。彼なら、とことんあがく。


 ほんのわずかな可能性でも、迷わず賭けにでる。自分に出来ることがあるなら、最善を尽くす。きっと。


「あたしたちも行こう! 太鼓橋の下へ! 門川君が行ったなら追いかけなきゃ!」


「こりゃ、単細胞に突っ走るでないわ、小娘」


 興奮したあたしに体をプラプラ揺らされながら、絹糸が呆れ声で言う。


「じゃから、あくまでも『可能性』でしかないのじゃよ。そこに永久が向かった確証は、ひとつもない」


「だっていまは、それしかアテがないじゃん!」


「我ですら、あの先になにが待ち受けておるのかわからぬのだぞ? お前は『リスク』という言葉の意味を知っておるのか?」


「ワタシ、日本語ワカリマセーン!」


「英語じゃ、英語」


「知ってるけど、いまはそんなの関係ないもん!」


 危険は承知だよ。それに逆に言えば、そんな危険な場所に門川君がいるかもしれないってことでしょ?


 その可能性を知りながら、黙って見過ごすわけにはいかない。何度も言うけど、あたしは彼の護衛なんだから。
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