神様修行はじめます! 其の五
 なんだ? 地震かな?


 何事だろうと思って下を見れば、暗黒の空間の全面が、揺れる水面のように小刻みに波打っている。


 おおー、これやっぱり水だったんだー!

 空間なのか水分なのか、こっから見た限りじゃ判断できなかったけど、こうして見ればたしかに質感が水っぽい。


「……乗れ!」


 突然、絹糸が鋭く叫んだ。


 危機感の迫るその声に、思わずあたしは水面から絹糸へと視線を移す。


「どうしたの? 絹糸」

「早く乗れ! 閉じる!」

「閉じ……? あ!」


 再び暗黒の水面へと視線を戻したあたしは、そこに見た光景に大きな声を上げてしまった。


 ……なにこれ! 水面が端っこの方から、すごい勢いで凍り始めている!?


 急にどうしたっていうの!? まるで真冬のオホーツク海、暗黒バージョンだ!


 真っ黒な氷なんて初めて見たよ! なんか気持ち悪い!


「うわ、うわ、凍ってる凍ってる! どんどん凍り付いてる!」


「永久様です!」


 凍雨くんが氷を指さしながら、大声を張り上げた。


「これ、永久様の術ですよ!」


「え!?」


「こんな中途半端な物質を、しかも一気に大量に凍らせるなんて、並みの術師じゃできません! 永久様しか考えられません!」


「じゃあやっぱり、門川君はこの中にいるんだね!?」


 凍り付いていく空間を見つめながら、そこに門川君の姿を見たような気がして、あたしの胸は高鳴った。


 今まさに、彼がこの中で、術を発動している真っ最中なんだ!


 あぁ、やった! 門川君が見つかった! 良かった。彼は無事だった……


 …………。


 ん? 待てよ?


 あたしはクィッと首を傾げて、一瞬考え込んた。


 彼が術を発動している真っ最中? と、いうことは……


「……ちょっとお!? まさか彼、戦闘の真っ最中とか!?」
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