神様修行はじめます! 其の五
 だよ! そうだよ絶対!

 いくら門川君が変わり者だからって、行く先々の空間を趣味で凍らせてるわけじゃあるまいし!


 いま、この中でなにかが起こってるんだ! 彼の身に危険が迫っている!?


「厚い氷に閉ざされてしまっては、中には入れぬ! 皆、早う我の背中に乗れ!」


 乗りやすいように姿勢を下げた絹糸の叫び声も終わらぬ間に、セバスチャンさんが素早く行動に移った。


「ジュエル様、典雅様! お乗りください!」


 お岩さんを抱き上げて絹糸の背に乗せ、いまいち状況に対応しきれていないマロさんの手を引っ張り、お岩さんの後ろに乗せる。


「さあ、凍雨様も!」

「はい!」


 こうしている間にも、氷は端からどんどん押し寄せてきて、もう半分以上が暗黒オホーツク。


 しかも、みるみる厚みも増してきて、ゴツイ氷同士がひしめき合う音がギシギシ響いている。


 俊敏な動きで絹糸の背中に飛び乗る凍雨くんと、迫りくる氷を見比べながら、あたしはマゴマゴしていた。


 え、えっとあの、あたしは!? 次、あたしの番でいいですか!?


「うああぁ!」


 長縄跳びに入るタイミングみたいに、及び腰になっているあたしの腰を、しま子の腕がサッと抱え込んだ。


 あ、しま子があたしの担当なのね!? しま子よろしく!


「小浮気様! 早くこちらに!」


 セバスチャンさんが手招きしながら叫んだけど、クレーターさんはヘタリ込んだまま動こうとしない。


 見れば視線がすごいスピードで泳いじゃってる。ありゃ完全に混乱してるんだ。


 でも氷の方も待ったなし! もう、すぐにも飛び込まなきゃ間に合わない!


「クレーターさん、早くこっち来て!」


「ひ……ひぃぃ……?」


「クレーターさん! 余計なこと考えなくていいから、来て!」


「小浮気様、お早く! ……時間がねえんだから早くしろよ!」


「クレーターさん! キレるー! セバスチャンさんがキレちゃうからー!」


 この人、キレたらほんとに手ぇつけられなくなるんだから、お願い早くー!
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