神様修行はじめます! 其の五
「なにを腑抜けた顔をしている。得体の知れない水底で、延々と宝物を創り続けるのだぞ? そんなこと、誰が好きこのんでやるものか」


「ものかって……嫌ならやらなきゃいいんじゃないの? 単純に」


 あたしがそう言うとクレーターさんは、ますます苦虫を噛みしめたような顔になった。


「我ら小浮気一族の能力は、宝物を創り出すことだ。それを自分たちで否定してしまってどうする」


「いや、どうするって、あたしに文句言われても」


「小娘よ、小浮気一族の力は、異形と直接戦うための力ではない。こちらの世界で戦いに加わらぬ一族の扱いは、お前も知っておろう」


「あ……」


 あたしは、お岩さんとセバスチャンさんを見た。


 そっか。この世界は、異形と勇ましく戦う者だけが認められる世界。


 だから命を守り育む権田原のような一族は、みんなすごく地位が低くて、いつも苦労ばかりしているんだ。


 それでも権田原一族は、その気になれば異形と戦える能力は持っている。


 それに貴重な『食料』を押さえているから、他の下位一族とは一線を画しているけど……。


「我ら小浮気の持つ能力は、宝物を創ることだけ。それを否定することは、この世界で生きることを放棄するのも同じことだ」


 各一族は、上層部によって、米ひと粒の配給に至るまで徹底して管理されてる。


 なのに、なんの役にも立たない一族と認定されてしまったら……。


 一族の命運は、すべて上層部の胸ひとつ。


 実際に凍雨くんの氷血一族は、上層部によって極寒の地に幽閉されて、言語に絶する生き地獄を味わうことになった。


「だから我ら一族は生きるために、上層部からの途方もない要求を飲むしかなかったのだ」
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