神様修行はじめます！　其の五
「し、しかし、当主様のお気持ちは別としても、お立場というものがございましょう！」


「まさしく、その通り！　御正室という地位は、門川の大きな柱とも言うべき存在なのです！」


「その柱に、下賤な血の混じった娘を据えるなどと、由々しきことですぞ！？」


「…………下賤？」


　それまでまったく無表情だった門川君の眉が、その言葉にピクリと反応した。


　門川君の変化を隣で直に感じて、『あ、こりゃヤバい！』って思ったときには、もう手遅れだった。


　すでに彼の全身からピリピリと肌を刺すような凍気がブワリと滲みだして、当主たちがハッと顔色を変える。


「この僕の目前で彼女を貶めるなど……皆、それなりの覚悟をもっての発言だろうな……？」


　室内の温度よりも冷徹な門川君の目が、大広間中の当主たちを射るように睨みつけている。


　当主たちは口から白い息を吐き出しながら、寒さとは違う意味でプルプル震えてしまった。


　でも実はいま、この大広間の中で一番顔色が悪いのは何を隠そう、このあたし。
< 14 / 587 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop