神様修行はじめます! 其の五
逸らしたノドから漏れた水晶の弱々しい掠れ声に、成重は我を取り戻した。
『水晶殿! いま助けます!』
そう叫んで術式の紋様の中に飛び込んだ瞬間……
―― バチバチィィーーーッ!
『……!?』
成重の体が術式の外側へと放り出された。
文字通り、大の男の体が放物線を描いて軽々と吹っ飛んでしまう。
そして壁に激突した体が、跳ね返るようにドサリと地に落ちた。
『ぐうぅぅ……!?』
全身を、何十本もの針で刺し貫かれたような痛みが走って、地面に転がりながら成重はもんどり打つ。
『成重殿!?』
悶絶する成重の耳に、聞き覚えのある声がした。
見れば水晶を挟んだ術式の反対側に、小浮気の長と水園が、青ざめた顔をして座り込んでいる。
『成重殿! なぜ、そなたがここにいるのだ!?』
『小浮気様……儀式を……儀式を、おやめください……』
痛みと衝撃で声を詰まらせながら、成重は必死に身を起こして訴えた。
『あなた様ならば、この術式を止められるはず。ど、どうか……』
『…………』
『どうか水晶殿を、あなた様の娘の命を、お守りください!』
『そうじゃ。小浮気殿は娘の命を守るために、この決断をしたのじゃ』
背後に近寄る足音がする。
その足音の主に向き直り、成重はガバリと地面に這いつくばって頭を下げて、必死に叫んだ。
『父上! 兄上! なにとぞこのような仕打ちは、おやめください!』
小柄で小太りの、丸顔に深いシワが何本も刻まれている年老いたこの男が、蛟一族の長である父。
そしてその隣には、父親の顔をそのままそっくり年若くしたような、兄が立っている。
父は息子の声など聞こえていないかのように、細い小さい目元を歪めてつぶやいた。
『まったく、完成形の力場の中に飛び込むなどと……。術式が乱れでもしたらどうするつもりじゃ』
『尊い儀式を邪魔だてするな。我が弟ながら実に情けない。恥を知れ、成重』
『水晶殿! いま助けます!』
そう叫んで術式の紋様の中に飛び込んだ瞬間……
―― バチバチィィーーーッ!
『……!?』
成重の体が術式の外側へと放り出された。
文字通り、大の男の体が放物線を描いて軽々と吹っ飛んでしまう。
そして壁に激突した体が、跳ね返るようにドサリと地に落ちた。
『ぐうぅぅ……!?』
全身を、何十本もの針で刺し貫かれたような痛みが走って、地面に転がりながら成重はもんどり打つ。
『成重殿!?』
悶絶する成重の耳に、聞き覚えのある声がした。
見れば水晶を挟んだ術式の反対側に、小浮気の長と水園が、青ざめた顔をして座り込んでいる。
『成重殿! なぜ、そなたがここにいるのだ!?』
『小浮気様……儀式を……儀式を、おやめください……』
痛みと衝撃で声を詰まらせながら、成重は必死に身を起こして訴えた。
『あなた様ならば、この術式を止められるはず。ど、どうか……』
『…………』
『どうか水晶殿を、あなた様の娘の命を、お守りください!』
『そうじゃ。小浮気殿は娘の命を守るために、この決断をしたのじゃ』
背後に近寄る足音がする。
その足音の主に向き直り、成重はガバリと地面に這いつくばって頭を下げて、必死に叫んだ。
『父上! 兄上! なにとぞこのような仕打ちは、おやめください!』
小柄で小太りの、丸顔に深いシワが何本も刻まれている年老いたこの男が、蛟一族の長である父。
そしてその隣には、父親の顔をそのままそっくり年若くしたような、兄が立っている。
父は息子の声など聞こえていないかのように、細い小さい目元を歪めてつぶやいた。
『まったく、完成形の力場の中に飛び込むなどと……。術式が乱れでもしたらどうするつもりじゃ』
『尊い儀式を邪魔だてするな。我が弟ながら実に情けない。恥を知れ、成重』