神様修行はじめます! 其の五
『水晶……!』


 駆け寄りながら、成重は呼ぶ。


 水晶、迎えに来たのだよ。


 あなたと私は、もう離れない。永遠に一緒だ。


 成重の呼びかけに、閉じていた水晶の両目がゆっくりと開いていく。


 生まれたばかりの雛鳥のように純真な目が、成重の姿を見つけて、それはそれは嬉しげに微笑んだ。


 その姿があまりにも愛おしくて、成重は駆け寄りながら声を限りに叫ぶ。


『愛しているよ! 私の水晶!』


 愛している。この世のすべての幸せを集めたような、私の水晶。


 透き通った奇跡。清らかな永遠の光。


 伸ばした指先が、いま、ようやくあなたに届く。


『成重様……』


 歌うような可憐な声で水晶は囁き、夢見るようにそっと手を伸ばす。


 白く華奢な指先で、彼女は焦がれ続けた者に触れることが叶うのだ。


 お互いを呼ぶ声以外、音も存在せぬ世界で。


 天には陽が、宙には風が、地には温もりが在り……


 そして『私』と『あなた』が、あたりまえに在る、この世界で。


『成重様……この世界は本当に、素晴らしいのですね……』


 愛し合う者同士の指先が触れて……


 想いを通わせ合った、その、刹那の瞬間。



―― 『――――――ッ!!』



 美しき世界は、現実となり。


 水晶の全身が、弾け飛んだ。

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