神様修行はじめます! 其の五
「小浮気よ、もう泣くな……とは、言わぬ」
唇をへの字にグッと曲げて、涙を堪えてるあたしの耳に、絹糸の声が聞こえる。
「お前の選択が間違っていたとは言わぬ。正しいとも言わぬ。ただお前自身、自分が選んだ事実を忘れず生きていることだけは、分かる」
錯乱したように泣き続けるクレーターさんが、はたして聞いているのかどうか。
分からないまま、絹糸は話し続ける。
「お前は自責の念に潰されながらも、寸でのところで踏ん張って生きておる。なれば……下の娘も浮かばれようぞ」
一瞬、泣き声がやんだ。
次の瞬間、さらに大声でクレーターさんが激しく泣きじゃくる。
あたしもせっかく耐えてた涙が、ボロボロッと頬を伝って落ちてしまって、慌てて顔をしかめた。
鼻がジーンと熱くなって、一気に湿る。
下の娘も、浮かばれようぞ。か……。
そんなん、ただの気休めなんだよ。
水晶さんの心はもう、どうやったって浮かびもしなきゃ、沈みもしない。
それはクレーターさん自身、嫌というほど思い知っている。
だって水晶さんは死んだんだもん。
クレーターさんが、『どうか死んでくれ』って頼んで、言われた通りに娘は死んだんだもん。
それでもクレーターさんは生きるんだ。
いっそ、一族も自分の人生も全部投げ出して死んじゃえたら、どれほど楽だろうに。
だけど投げ出さずに、背負って生きる地獄を選んだ心を、絹糸は『分かっている』と言ってくれた。
言ってもらったところで現実は何も変わらないし、過去は消えないけど。
それでも、それでも……。
自分が命を奪った幾多の者たちの思い出を抱えて、それでも生き抜く決意をした人間にはさ……
その言葉は、沁みるんだよ。
ねぇ、クレーターさん……。
唇をへの字にグッと曲げて、涙を堪えてるあたしの耳に、絹糸の声が聞こえる。
「お前の選択が間違っていたとは言わぬ。正しいとも言わぬ。ただお前自身、自分が選んだ事実を忘れず生きていることだけは、分かる」
錯乱したように泣き続けるクレーターさんが、はたして聞いているのかどうか。
分からないまま、絹糸は話し続ける。
「お前は自責の念に潰されながらも、寸でのところで踏ん張って生きておる。なれば……下の娘も浮かばれようぞ」
一瞬、泣き声がやんだ。
次の瞬間、さらに大声でクレーターさんが激しく泣きじゃくる。
あたしもせっかく耐えてた涙が、ボロボロッと頬を伝って落ちてしまって、慌てて顔をしかめた。
鼻がジーンと熱くなって、一気に湿る。
下の娘も、浮かばれようぞ。か……。
そんなん、ただの気休めなんだよ。
水晶さんの心はもう、どうやったって浮かびもしなきゃ、沈みもしない。
それはクレーターさん自身、嫌というほど思い知っている。
だって水晶さんは死んだんだもん。
クレーターさんが、『どうか死んでくれ』って頼んで、言われた通りに娘は死んだんだもん。
それでもクレーターさんは生きるんだ。
いっそ、一族も自分の人生も全部投げ出して死んじゃえたら、どれほど楽だろうに。
だけど投げ出さずに、背負って生きる地獄を選んだ心を、絹糸は『分かっている』と言ってくれた。
言ってもらったところで現実は何も変わらないし、過去は消えないけど。
それでも、それでも……。
自分が命を奪った幾多の者たちの思い出を抱えて、それでも生き抜く決意をした人間にはさ……
その言葉は、沁みるんだよ。
ねぇ、クレーターさん……。