神様修行はじめます! 其の五
「それにしても、永久様たちはどのようにして、こんな場所に留まっておられるのでおじゃろう?」


 マロさんが不思議そうに首を傾げた。


 言われてみれば、そうだよね?


 あたしたちはマロさんの結界があるから平気だけど、あのふたりはどうしてるんだろ?


「永久様の術で、魚になって泳いでらっしゃるんじゃありませんの? カクレクマノミとかに」


「お岩さん、ファ◯ンディング・ニモとは違うよ」


「そうですわね。仮にいま、永久様がニモになっているとしても……」


「ならないってば」


「この水、明らかに危険物質ですわよね? 生身で触れたら一瞬で、確実にあの世行きな気がしますわ」


 そんな危ない水かどうかは分かんないけど、生身でこの中を泳げと言われたら、まぁ確実に遠慮はしたい。
 

「おそらく水園は、宝物を持ち出して使用しているのだろう」


 クレーターさんの言葉に、あたしはギョッとした。


 宝物の力で結界を張ってるってこと?


 それじゃ水園さん、水絵巻以外にも宝物庫から色々とチョロまかしてるの?


「それ、上層部とかにバレたらやばいじゃん!」


「バレてもかまわん」


「いや、かまうって! なに言ってんのクレーターさん!」


「なにか、よほどの事情があっての行動だろう。なら、この私が父としてすべて責任を負う」


 すっかり落ち着きを取り戻した声で、クレーターさんが言った。


「あのとき水晶は、自分の命と引き換えに一族と水園を守った。その遺志は私が継がねばならん」


 日頃、小動物みたいにビクビク怯えながら、一族を危険から遠ざけてきたのは水晶さんの遺志を守るため。


 その必要があるなら、自分の命くらいなら、いつでも投げ出す覚悟はあるんだろう。


「水園を守るために、さあ行くぞ。闇の底へ」
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