神様修行はじめます! 其の五
「どうやら目的地に着いたようだ」


 クレーターさんの声に、光の行方を追って上に向けていた視線を下へ下ろした。


 そしてあたしは、目の前の光景に大きく息をのんで絶句する。


「……!」

「これは、なんと美しい……!」


 絹糸もそう言ったきり、言葉を失った。


 あたしたち全員、思いもよらない景観を前にして、声を失って見惚れるばかり。


 そこに見えたものは、まさに水晶の草原だった。


 異界の水底に、まるで平原に咲き誇る花々のように、無数の小さな水晶が見渡す限り存在している。


 水底の一面がぼんやりと明るい。


 掌にすっぽり収まってしまうほど小さな水晶たちが、それぞれ淡い光を放って、周囲を照らしているからだ。


 水晶の放つ白い光が四方八方に拡散し、それが周囲の薄暗さと相まって、ユラユラ不規則な影を生み出す。


 闇の中に息づく仄かな光源と、暗い影との組み合わせが、水底を無造作に彩る。


 生命を感じるような、摂氏零度の炎が揺らめくような美しさ。


 本当に夜明け間近の空かと思うほど、闇色と光色がここに自然に混在している。


 この幻想のような絶妙な光景を、どう表現すればいいだろう。


「いやはや、これは見事なり。まさに心を奪われるような光景じゃのう」


「なんだかここの水、他の所よりも透明度が高くない?」


「おそらくこの、水晶の群れが発する光の作用じゃな。この光が濁った水を浄化しておる」


「え? そうなの?」


「うむ、清らかで澄んだ力を感じる。あの頃の、非常に美しかった水とまったく同じ気配じゃ」


「じゃあこの水晶たちって、ここの水をまた綺麗にしようとしているの?」


 あたしは、水晶の草原を見渡した。
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