神様修行はじめます! 其の五
 完全に濁りきってしまった水の濃度と全体量に比べて、ここの水晶は圧倒的に数が少ない。


 だから白い光は上まで届くことができず、水を浄化することも叶わないまま、途中で蛍のように儚く消えてしまう。


 でも水晶は、何度消し去られようと、自分の精一杯で白い光を放っている。


 誰も知らない、見られることもない深い深い水の底で、届かぬ光を上へ上へと生み出し続けている。


 まるで、天を見上げて優しく微笑んでいた水晶さんみたいに。


「お前の名の由来が、本当に存在していたよ。水晶……」


 クレーターさんが、水晶の草原を見つめながら静かにつぶやいた。


 涙に濡れた両目が、とても切なげに、でも本当に嬉しそうに細められている。


 ……うん。存在してたんだね。


 真っ暗な水の底に隠されていても、誰に気づかれることがなくても。


 それでもここに、こんな素晴らしい存在が確かにあって、あたしたちは今それを目にしているんだ。


 あたしたちは、それを知ったよ。


 あたしたちは出会ったよ。


 水晶さん……。


「この水晶が力の源であるという説は、事実であろうな」


「さようでございますね。ならば、永久様も……」


 不意に、絹糸とセバスチャンさんが会話を止めた。


 そしてふたり同時に、バッと頭上を見上げる。


 どうしたのかと、つられて見上げたあたしの目に……。


―― ド―――――ン!


 得体の知れない黒い大きな影が横切るのが見えたのと、激しい衝撃で体がひっくり返されたのと、同時だった。


「痛―――――!」

「きゃあぁぁ!?」

「うわあぁ!?」


 すぐ下にマロさんの結界の壁があって、引っくり返った衝撃を柔らかく受け止めてくれる。


 そのままベタッと横になって息をついていたら、凍雨くんが上からドサッと降ってきた。

 ぐえっ! 油断大敵!


「うわ! す、すみません天内さん!」
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