神様修行はじめます! 其の五
慌てた凍雨くんが、退こうとしてジタバタもがいている。
たいして広くもない結界の中は、引っくり返った全員が入り乱れて、うめき声をあげながらゴッタ返していた。
これじゃまるで、あたしの机の引き出しの中だよ!
落ちてきたのがしま子じゃなくてよかった! 絹糸だったら、マジ死んでるし!
「いますぐ退きま……うわぁ!?」
―― ド―――――ンッ!
結界全体が大きく傾いで、身を起こした凍雨くんが悲鳴をあげながらまた倒れてくる。
「ぐふっ! お、重……!」
「すみませんー!」
凍雨くんの体重を必死に受け止めながら、あたしの目は、視界の端に蠢く黒い影を追っていた。
絹糸の体をすっぽり覆ってしまいそうな、巨大な影。
どんくさい魚が、でかい図体を持て余して突っ込んできたのかと思ったけど、違う。
これ、明確にこっちを狙ってきてる! しかも生き物じゃない!
黒い色をした、ボヤッとした霧の集合体みたいな物質を指さして、あたしは叫んだ。
「クレーターさん! あの流線型の、ひしゃげたデカいラグビーボールみたいな黒い影ってなに!」
「わからん! あんなもの、見たこともない!」
「見たことないって、ずっとここで暮らしてたんでしょ!?」
あんな目立つ、しかもわざと他人様に体当たり食らわしてくるような危険物質、知らないの!?
「ここでは暮らしておらん! 我らが住んでいたのは、このずっと上だ!」
あ、そう言えばそうでした。
この深さは、小浮気一族ですら踏み込んだことのない領域だったっけ。
じゃあ、あの黒い物質はこの辺を根城にしている未知の異形とか!? うわ、それやばい!
追い払うにしても倒すにしても、知らない相手じゃ弱点もわかんないじゃん!
―― ウオォォォ……ン……
鼓膜と頭の芯にビリリと響くような、野太い音が周囲の水を震わせている。
これ、いつも太鼓橋の下から聞こえてくる不気味な音だ。
正体不明なあの音、コイツが出してた音だったのか!
たいして広くもない結界の中は、引っくり返った全員が入り乱れて、うめき声をあげながらゴッタ返していた。
これじゃまるで、あたしの机の引き出しの中だよ!
落ちてきたのがしま子じゃなくてよかった! 絹糸だったら、マジ死んでるし!
「いますぐ退きま……うわぁ!?」
―― ド―――――ンッ!
結界全体が大きく傾いで、身を起こした凍雨くんが悲鳴をあげながらまた倒れてくる。
「ぐふっ! お、重……!」
「すみませんー!」
凍雨くんの体重を必死に受け止めながら、あたしの目は、視界の端に蠢く黒い影を追っていた。
絹糸の体をすっぽり覆ってしまいそうな、巨大な影。
どんくさい魚が、でかい図体を持て余して突っ込んできたのかと思ったけど、違う。
これ、明確にこっちを狙ってきてる! しかも生き物じゃない!
黒い色をした、ボヤッとした霧の集合体みたいな物質を指さして、あたしは叫んだ。
「クレーターさん! あの流線型の、ひしゃげたデカいラグビーボールみたいな黒い影ってなに!」
「わからん! あんなもの、見たこともない!」
「見たことないって、ずっとここで暮らしてたんでしょ!?」
あんな目立つ、しかもわざと他人様に体当たり食らわしてくるような危険物質、知らないの!?
「ここでは暮らしておらん! 我らが住んでいたのは、このずっと上だ!」
あ、そう言えばそうでした。
この深さは、小浮気一族ですら踏み込んだことのない領域だったっけ。
じゃあ、あの黒い物質はこの辺を根城にしている未知の異形とか!? うわ、それやばい!
追い払うにしても倒すにしても、知らない相手じゃ弱点もわかんないじゃん!
―― ウオォォォ……ン……
鼓膜と頭の芯にビリリと響くような、野太い音が周囲の水を震わせている。
これ、いつも太鼓橋の下から聞こえてくる不気味な音だ。
正体不明なあの音、コイツが出してた音だったのか!