神様修行はじめます! 其の五
「絹糸! あれ、ヤバイ系だと思う!? それともなんとか手懐けられそう系!?」


「知らんわい! ……また来るぞ!」


 少し離れた所に留まっていた影が、まるで助走をつけるように接近してくる。


 なんか、スペインの闘牛思い出した! あれ絶対、攻撃モード全開野郎だよ!


「絹糸様、ここはいったん退いて、相手の出方を見ましょう!」


 セバスチャンさんの指示に、絹糸が素早く反応する。


 すぐには襲われない程度の距離まで迅速に移動して、あたしたちは敵の様子を窺った。


 これでなんとか諦めてくれたなら、助か……


「……らないみたいよ、ちょっと!? あいつ追っかけてくる!」


 せっかく離れた距離を縮める勢いで、流線型がグングン接近中!


 また絹糸が離れても、執拗に追いかけてくる。


 うわー、しつこいー。ネッチネチのストーカータイプ。


 できるだけ水晶から遠ざけられないよう、絹糸がうまく位置と距離を変えてくれているけど……困ったな。


「らちがあきませんわ。戦った方がよろしいのかしら?」


「でも、正体不明の異形との直接対決は避けるべしって、門川君に叩きこまれたよ」


「ふむ。それは戦いの鉄則じゃな」


 それに、ストーカーとの直接対決は絶対に避けろって、テレビで専門家も言ってたし。


「でもこのままでは、麻呂らが追いやられてしまいまする」


 うぅ、どうしよう。


 逃げる者は追いかけたくなるのが、恋と犬の定番だよね?


 じゃ、逃げずにしっかり両手を広げてドーンと受け止めてあげれば、相手の気も済むかな?


 ……いやいや! 犬はともかく、ストーカー相手にそれしちゃダメだろ自殺行為!


「ご覧になって! 異形の体が、ふたつに分かれていきますわ!」


 お岩さんの言う通り、異形の体が半分くらいの部分で、スーッと千切れていく。


 霧みたいな形状だから、分かれるのも形を変えるのも、きっと変幻自在なんだろう。
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