神様修行はじめます! 其の五
―― ピピ――ッ


 待ったなしで不吉な音は続く。


 頭上の結界に、細い一本線のような切れ込みが真っ直ぐ入ったのが見えて、あたしは倒れた体勢のまま悲鳴をあげた。


「見て! 亀裂が入っちゃったよ!」


 一本線がまさにストッキングの伝線みたいに、ピーッと縦に走っていくのを見て、クラッと気が遠くなりかける。


 だって想像してみてよ! 宇宙空間の遊泳中に、宇宙服のストッキング伝線だよ!?


 死ぬって絶対!


「マロさんお願い! 早く結界張り直して!」


「ゆ、指が、うまく動かな……。印が組めないのでおじゃる!」


 さっきの衝撃波の影響で、マロさんの全身もまだ痺れているんだ。


 このままじゃ水が中に入り込んでくる! やっぱり即死か!?


 即死しないまでも、人間が水中で息を停止していられる時間なんて限られている。


 あたしの命は、もって数十秒!? ヒー! 死への秒読みスタートじゃん!


―― ピピッ……ピピッ……


 亀裂が広がっていく音がマジでカウントダウンに聞こえて、全身からどんどん血の気が引いていく。


 その間にも亀裂はどんどん、どんどん……


 あぁ、どんどんどんどん大きくなって……!


「……!」


 あたしたちの命を繋ぐ唯一の手段が、ついに消滅した。


 絶望を認識するヒマもなく、大量の水にドーッと全身を包み込まれて頭が真っ白になる。


『ガァ……ボ……!』


 殴りつけてくるような水の勢いを感じて、無意識に口を開けて叫ぼうとした。


 無意味な行為だと分かっていても、勝手に口が開いて空気を吸い込もうとしてしまうんだ。


 でも当然酸素なんかあるはずもなく、代わりに水がいっぱい入り込んでくる。


 異質な液体が自分のノドを通過する感覚に、あたしは総毛立った。


 美味しくない! てか、げろマズ! てか、普通に気色悪いよこんな正体不明な水!
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